ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460251hit]

■キスキス,バンバン、隠された記憶、ぼくを葬る、プロデューサーズ、戦場のアリア、僕の大事なコレクション
いように伝わってくる。プレス資料に掲載された海外映画評
では、いろいろな社会問題と関連が見いだされているようだ
が、僕にはもっと根元的な恐怖を体験する感じだった。
なおラストカットの衝撃というのが宣伝コピーだが、最近の
社会情勢などを見ていると、僕はさほど衝撃には感じなかっ
た。しかしこのラストカットによって恐怖の本質が明らかに
されることは確かだろう。そしてこれが現実ということだ。
主演はダニエル・オートゥイユと、その妻役のジュリエット
・ビノシェ。また、主人公の寝たきりの母親役でアニー・ジ
ラルドが出演していた。

『ぼくを葬る』“Le temps qui reste”
『8人の女たち』や『ふたりの5つの分かれ路』などのフラ
ンソワーズ・オゾン監督の最新作。オゾン監督の作品はいつ
も女性が主人公だと思っていたが、本作は、僕が見た中では
初めて男性を主人公にした作品だった。
その主人公は、ファッションカメラマンとして将来が期待さ
れていた。ところが撮影中に倒れてしまう。そして診断の結
果は、複数の臓器がガンに侵されて手術は不能。化学療法を
拒否した彼の余命は3カ月程度と宣告されてしまう。
その3カ月間で、彼が何をしたかが綴られる作品だ。
同様の物語では、2003年8月に『死ぬまでにしたい10のこ
と』という作品を紹介しているが、女性(主婦)が主人公の
前の作品が、極めて計画的に死を迎えるまでの準備をしてい
たのに対して、今回の作品の主人公の場当たり的なこと。
実は、前の作品は脚本監督も女性だったものだが、今回、脚
本監督のオゾンは男性ということで、男女の違いが見事に表
わされた2作というところだ。
とは言え、場当たり的とは言っても主人公のやってみせるこ
とは、人間としては実に見事に正しいことであって、その点
では見終って清々しい気持ちにさせられた。然もそれが、何
ら特別なことではなく、自分でもその立場なら同じようなこ
とをしただろうと思えることで、納得して見ていられたもの
だ。
特には、確執のあった姉との関係や、事情を抱えた夫婦との
関係では、予想以上に見事な主人公の行動が素晴らしくも感
じられた。この辺りは、自分がその行動を思いつけるかどう
か自信がないが、その点でもこの物語に感心した。
主演は、フランスの若手有望株と言われるメルヴィル・プポ
ー。また、主人公の祖母役でジャンヌ・モローが素晴らしい
演技を見せている。
なお邦題は「葬る」と書いて「おくる」と読ませるようだ。
因に、本作の原題は「残された時間」という意味だが、そう
言えば、2003年の作品の原題は“My Life Without Me”とい
うもので、どちらも原題は抽象的な表現が使われていた。一
方、邦題には、死や葬という言葉があってかなり直接的な感
じだ。
まあ、日本の観客には、これくらい直接的にしないとアピー
ルしないのかも知れないが、何となく、日本人の死に対する
感覚が変わってきているような感じがして、ちょっと気にな
ったところだ。

『プロデューサーズ』“The Producers”
1968年度のアカデミー賞オリジナル脚本賞を受賞したメル・
ブルックス監督の同名の映画(日本未公開)を、2001年にブ
ルックス自身の脚色、作詞、作曲で舞台化し、さらにそれを
映画化した作品。
なお舞台作品はトニー賞で史上最多の12部門で受賞し、その
際の演出及び振り付けのスーザン・ストローマン(両賞受賞)
と、主演のネイサン・レーン(受賞)、マシュー・ブロデリ
ック(ノミネート)がそのまま映画化にも参加している。
ブルックスの映画作品は、『ブレージングサドル』や『ヤン
グ・フランケンシュタイン』などいろいろ見てきたが、パロ
ディは秀逸、だけどギャグは泥臭くて、なかなか日本では受
け入れられ難い映画作家だったように思う。
そしてアメリカでの人気も、1970年代がピークと言われ、映
画作品は1993年の『ロビン・フッド』辺りが最後だったよう
だ。この作品も悪くはないけれど、これを面白がるには、相

[5]続きを読む

03月14日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る