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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(アジアの風・日本映画ある視点)
今の時点で見るとかなり古くさい感じは否めない。まあそれ
も時代の流れだから仕方ないことではあるが、出来ればその
時代に見て置きたかった作品と言うところだろう。
なお、日本人留学生はイ・ヘジンという韓国人女優が演じて
いるが、ちょっと有森也実に似た感じで、韓国人にとっての
日本人女性のイメージがこういうものと判ったことは面白か
った。

『愛と卵について』
ジャカルタ市街のマーケットで暮らす人々の姿を、3人の子
供を中心に描いた物語。
3人の子供の一人は水害の混乱で兄と別れ別れになり、一人
は母親が家出し、一人は孤児だがマーケットに引っ越してき
た女性を母のように慕ったことからトラブルが発生する。そ
んな3人の子供と、イスラム最大の祝日ラマダンでの出来事
が描かれる。
インドネシア映画では、以前の映画祭で国旗を巡って子供た
ちが大冒険をする作品を見たことがあるが、今回の作品も子
供たちが主人公で、何か特別なメリットでもあるのかと思っ
てしまうところだ。特に本作では、最後のシーンの子供表情
には、何か特別な仕掛けでもあるのではないかとも思えた。
配られた資料には特別なインフォメーションはなかったよう
だが、何かありそうな気がしてならない作品だった。
それは別にして、子供たちが生き生きと描かれていることに
は、それだけで嬉しいものも感じてしまうところで、それは
それで良かった。

『バージン』
結婚するまでバージンでいることを誓った16歳の少女を中心
に、大都会ジャカルタに住む少女たちの生態を描いた作品。
主人公は、同級生3人組の一人。他の一人は政府高官の娘で
タレント志望の発展家の少女と、もう一人は母子家庭で必死
に生きている感じの少女。3人はいろいろな悩みも分かち合
う間柄だったが、ライヴァルの同級生が人気タレントの共演
者として映画デビューをすることになった辺りから、焦りと
共にいろいろな出来事が起こり始める。
自分にも娘がいて、同じような年代を通り過ぎてきたことを
考えると、まあこういうことが起きていても不思議ではない
し、実際に起こっているのだろうと思われる作品だ。それが
不幸なことなのか、幸運なことなのかも判らないし、それで
もこの物語の少女たちのように強かに生き残って行く。それ
が若者ということなのだろう。
少し前だったら、こんな不謹慎な映画と言ってしまいそうな
作品だが、これが現実と認識しなければいけない世の中でも
あるようだ。

『愛シテ、イマス。1941』
太平洋戦争勃発前後のフィリピンの村を舞台にしたドラマ。
物語の発端は現代、村の英雄を讃える碑を建立するために、
当時のことをよく知る年配の女性が担当者の許に招かれる。
そこには、彼女自身も含め数奇な運命に翻弄された昔の仲間
たちの名前が並んでいた。中でも彼女と一つ名前を分け合っ
た青年には、裏切り者という説もあったが…彼こそが最高の
英雄だったと彼女は主張する。その青年は、女装した姿で日
本軍将校と生活を伴にしていたのだ。
単純にはオカマものの作品ではあるのだが、故意と偶然が重
なって歴史の陰に翻弄された人々の悲しくも毅然とした物語
が綴られて行く。実際にあったことかどうかは別として、実
にうまく作られた物語で、あってもおかしくないという感じ
にはできあがっていた。
日本人将校役のフィリピン人俳優の怪しげな日本語は、最初
の内こそ失笑が起きたが、物語が進むに連れてそんなことは
どうでも良くなってしまう。勿論日本軍は悪役の物語だが、
それすらも超越した人間ドラマという感じの作品だった。

『ミッドナイト、マイラブ』
『マッハ!!』にも出ていたペットターイ・ウォンカムラオの
主演作。深夜の都会を流すタクシーの運転手と風俗で働く女
性の交流を描いたドラマ。
中年の運転手は時代遅れのAMラジオを愛し、懐メロ番組を
聞き続けている。そしてふと乗り込んできた女性は、都会で
の生活に疲れ、そんな運転手に親しみを覚え、毎夜同じ場所

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11月12日(土)
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