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On the Production
by 井口健二
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■東京国際映画祭2005(コンペティション)
も動員されるが、そこにはいろいろな危険も潜んでいる。
主人公は、子供の頃に母親と共にその村を脱出し、外部で教
育を受け成功したが、その村には子供の頃に将来を誓いあっ
た女性もいた。そして主人公は、村に残って生涯を閉じた父
親の葬儀を行うために戻ってきたが、村の現状を目の当りに
してしまう。
ジャーナリストの評価はかなり高かったようだが、僕として
は3年前の映画祭で上映された『シティ・オブ・ゴッド』の
衝撃が大きかっただけに、この程度ではという感じもした。

『ヒトラー・カンタータ』
ドキュメンタリー作品などで多くの受賞歴を持つという女性
監督ユッタ・ブルックナーの作品。
ナチス華やかな頃のドイツを舞台に、ユダヤ人の妻を持ちな
がら作曲家として認められ、忠誠を試す意味でもある総統の
誕生日に演奏されるカンタータを依頼された作曲家と、親衛
隊々員の婚約者の依頼で助手としてその作曲家に付き添い、
監視をすることになったヒトラーに心酔する女性音楽家を巡
るドラマ。
これにベルリンの撮影所でのナチス宣伝映画の製作の話や、
その裏で行われているポルノ映画の制作の話、さらに人種の
証明を巡る話なども交錯するが、正直に言ってどの話も中途
半端というか、全体のまとまりがない。特に、ポルノに出演
する女性音楽家に瓜二つの女優の話などは、これだけでは何
のためにあるのかよく判らないほどだ。
もっとも当時のドイツの状況などは、戦後生まれの日本人の
僕には判らなくて当然なのかも知れないが、それにしてもピ
ンと来ない作品だった。ただし、劇中で宣伝映画の残りフィ
ルムで作られたとされるパロディ映画は上出来で、そこだけ
は感心して見ていた。

『レター・オブ・ファイアー』
スリランカで1992年から活動している映画監督アソカ・ハダ
ガマの作品。
父親は元検事、母親も判事という名門一家の一人息子が犯し
た殺人事件を巡る物語。母親は、判事として警察に逮捕を指
示する一方、偶然息子を保護してしまった警備員には、隠し
続けることを依頼する。しかしこの不自然な行動の陰には、
一家に隠された大きな秘密があった。
実は、上映の際に配られた資料の中の監督のコメントに飛ん
でもないspoilerがあって、僕はそれが原因となる民族的な
因習のようなものが描かれるものと思い込んでいた。ところ
が映画の内容は、そのコメントで語られた内容そのものが映
画の結論というかオチになるもので、ちょっと映画の内容を
見間違えてしまった感じがするものだ。
従って、それを知らずに見たらもっと衝撃があったのかも知
れないが、それを除くと、ただのエキゾチックな物語という
感じだけのものになってしまった。もっともそれがオチだと
知った瞬間の衝撃は多少あったが…
スリランカの作品では、3年前の『風の中の鳥』の印象が強
かっただけに、社会性を伴わない作品にはそれ以上のものは
感じられなかった。後半の母親の狂乱ぶりなども唐突で、映
画としてのまとまりも今一つの感じがした。

『ドジョウも魚である』
中国の庶民派監督として知られるヤン・チャーヨウの最新作
で、映画祭での上映がワールドプレミアとなった作品。映画
祭では最優秀芸術貢献賞を受賞した。
北京での紫禁城修復工事に従事する農村からの出稼ぎ労働者
の生活を描いた作品。ドジョウ(泥鰍)は、離婚して双子の
幼い娘を連れて出稼ぎに来た女性の名前であり、彼女と同じ
姓を持つ出稼ぎ手配師との交流を中心に物語は進められる。
無賃乗車なのか貨物列車で到着し、暗闇の中を逃げるように
移動する人々。そんな不正も厭わず首都を目指し、そこでの
生活が夢。しかし首都での生活も一朝一夕にうまく行くもの
ではない。でも人々には夢があり、その夢に向かって突き進
んで行く勇気も持ち合わせている。
僕の両親も、戦後に農村から上京し、闇相場を利用してそれ
なりの成功は納めたことや、いろいろな苦労話なども聞かさ
れて来たから、この物語の内容にはそれなりの共感を持つ。

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11月07日(月)
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