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On the Production
by 井口健二
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■博士の愛した数式、ソウ2、TAKESHIS’、ハリー・ポッターと炎のゴブレット
『ソウ2』“Saw 2”
(本作は10月29日に公開されたものですが、紹介しておきま
す)
昨年1月のサンダンス映画祭で絶賛され、ちょうど今頃に日
米同時に一般公開された『ソウ』の続編。前作同様、一つの
場所に閉じ込められた複数の人間が、自分の命をかけて闘う
様子が描かれる。
前作は、脚本監督主演を分担したリー・ワネルとジェームズ
・ワンが、自費で作り上げた8分のフッテージを製作会社や
俳優に見せて歩き、それが評価されて映画化に漕ぎ着けたと
いうものだったが、今回もまた製作に至る過程が面白い。
今回の場合は、前作のフッテージを見たヴィデオ監督のダー
レン・リン・バウマンがその映像を気に入って、自作の脚本
を映画化する際の撮影を撮影監督のデイヴィッド・アームス
トロングに依頼したことに始まる。ところがアームストロン
グは、ちょうど“Saw 2”のアイデアを探していた前作の製
作者にこの脚本を見せ、一気に続編としての映画化が決った
というものだ。
そこで、試写後に行われたティーチインで、バウマン監督に
元脚本のアイデアと映画化との違いを聞いてみた。それによ
ると、深作欣二監督の『バトル・ロワイアル』に触発された
という元脚本は単純に殺し合うだけのものだったそうだ。そ
こに、前作を手掛けたワネルがいろいろな仕掛けを盛り込ん
で“Saw 2”に仕立てて行ったということだ。
というところで物語の紹介だが、今回は、前作で捜査に当っ
ていた刑事が前面に登場し、しかも早々に犯人ジグソウとそ
のアジトが発見されてしまう。しかしそこで彼は、息子がジ
グソウの手に掛かり、他の男女と共に位置不明の建物に拉致
されていることを知る。そして救出までのタイムリミットが
提示され、ゲームが始まるというものだ。
一方、閉じ込められた男女にも徐々にヒントが与えられ、彼
ら自身もサヴァイバルの闘いを始めることになるが…
実は、ティーチインの中で聴衆にアンケートが行われたが、
1、2のどちらが面白かったかと言われて、僕は2に手を挙
げた。確かに1は不条理劇として見事に成立していて、その
点の良さは認めるが、不条理劇と言うのは得てして後味が悪
いものだ。
その点で本作は、不条理劇としての出来は多少落ちるかも知
れないが、大衆向けの面白さという点では良かったように思
える。特に前作では、登場人物たちの過ちは言葉で語られる
だけだったが、本作では映画の中でそれが明示される点にも
脚本の巧みさを感じた。
なお、本作は日本ではR−15指定で、誰にでも勧められるも
のではないが、映画ファンとしては納得できる作品だったと
言える。またティーチインでは、さらなる続編の質問が出た
が、製作者の一人がブログの中で“Saw 3”で頭が痛いと書
いてしまっているそうだ。
『TAKESHIS’』
2003年の前作以来となる北野武監督作品。今年のヴェネチア
映画祭でサプライズ上映されて話題を呼んだ。
監督の前作についてはいろいろあって、自分のサイトからは
紹介文を削除したが、基本的に北野作品は、一部作品の暴力
描写には辟易するところはあるものの、気に入っている作品
が多い。
特に1998年の『HANA-BI』、99年の『菊次郎の夏』、2002年
の『Dolls』に関しては、監督の感性が自分に合っていると
感じさせてくれたものだ。そして本作も、その気持ちは変わ
らない。自分もこんな作品を作ってみたい、と思わせてくれ
る作品だった。
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10月31日(月)
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