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On the Production
by 井口健二
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■ミート・ザ・ペアレンツ2、欲望、もっこす元気な愛、ダウン・イン・ザ・バレー、ベルベット・レイン、シルバーホーク、デッドライン
る。そして3人はその時から疎遠になっていったのだった。
一方、ピアニストの女性も、今は何不自由の無い生活ではあ
るものの、老齢の夫は彼女の肉体を求めることはなく、不能
かとも思っているのだが…しかし夫の身の回りの世話をする
住み込みの女性との関係に不信なものも感じている。
これだけの材料が揃えば、いろいろと「火曜サスペンス」ば
りのミステリーが想像できるところだが、この映画では、謎
はあってもサスペンスやミステリーには向かわない。あくま
でも、主人公の女性の心の襞を描く作品だ。
ところがこの主人公の心の襞が、正直に言って男性の僕には
感情移入を拒否されたような感じで、見ている間は疎外感す
ら感じたものだ。実際の女性の観客がどう感じるかは判らな
いが、僕が見る限りでは、見事に女性映画と呼ぶ他はないこ
とになりそうだ。
原作が発表されたのは1998年ということで、最近問題にされ
ている男性の機能不全の問題がほぼ無視されているのが、残
念というか多少疑問にも感じてしまうところだが、それも女
性映画だから…というところだろうか。
なお、ピアニストの夫が求めなかった理由は、最後にそのヒ
ントがあるように思えるが、そのヒントの通りなら、それは
哀しいものだった。

『もっこす元気な愛』
脳性マヒのために両腕と言語に障害のある男性と、健常者の
女性との結婚にいたる道を描いたドキュメンタリー作品。 
主人公は生後すぐに原因不明の高熱に犯され、両腕と言語に
障害を持ったまま成長した。しかし自立心の強い彼は、学業
を終えると仲間と共に独立の作業所を創設し、もちろん周囲
の人の協力もあるのだろうが、それなりに生活の基盤を築い
ている。
そんな彼が健常者の女性と出会い、一緒に暮らすようになる
が、ひとり娘の行く末を案じる母親は彼らの結婚には大反対
だ。これに対して彼は、運転免許を取得して自分が独立した
人間であることを証明しようとする。
脳性マヒの人を描いた作品は、一昨年の『ジョゼ』や昨年の
『オアシス』などドラマで描かれたものは見ているが、ドラ
マであれば演出によって描けるものがドキュメンタリーでは
逆に制約によって描きづらいことはあると思う。
しかしこの作品は、テーマを最小限に絞ることによって、見
事に現代が抱える問題点を浮き彫りにしてくる。それも、社
会性の強いテーマを一旦個人レベルに落として、そこから主
人公と共に観客も見つめられるようにする、その描き方が実
にうまい。
また、この手のドキュメンタリーではよくあることかも知れ
ないが、登場人物たちが普段の生活では実に屈託なく描かれ
ている。しかしその陰に潜む彼らの苦しみは計り知れないも
のがある訳で、その彼らが感情を露にするシーンの感動はこ
の上無いものになる。
健常者である自分には、多分見る目に奢りがあると思う。し
かしそんな目を通しても、彼らの気持ちを感じ取れるのは、
この作品の制作者(監督)の丁寧な仕事によるところが大き
いのだろう。何にしても感動を共有できることは素晴らしい
ことだ。
監督の作品リストから見ると、この作品にはそれほどの製作
時間は掛けられていないように見える。しかしその中で、こ
こまで登場人物の中に入り込んで、その主張を映像化してみ
せることは並大抵のことではないだろう。それを実現してい
ることにも感心した。

『ダウン・イン・ザ・バレー』“Down in the Valley”
ロサンゼルス郊外のサンフェルナンド・バレーを舞台に、そ
の町で父親と共に暮らす姉弟と、そこにふらりと現れた謎の
男との交流を描いたドラマ。
典型的な郊外住宅地、町の中央には12車線のフリーウェイが
通り、人々の生活は中流を絵に書いたようなもの。主人公の
17歳の少女トーブはそんな生活に飽き足らないが、だからと
言って何をする目的もない。
そんな彼女がガソリンスタンドで働くカウボーイスタイルの
男を目に留める。彼をビーチに誘った彼女は、初めて海を見
たと言ってはしゃぐ男に憧れの男性像を感じ、瞬くうちに親

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09月29日(木)
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