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On the Production
by 井口健二
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■私の頭の中の消しゴム、シン・シティ、愛を綴る詩、そしてひと粒のひかり、エコーズ、チャーリーとチョコレート工場
の物語のオムニバスになっている。それぞれの主人公はミッ
キー・ローク演じるマーヴ、クライヴ・オーウェン演じるド
ワイト、ブルース・ウィリス演じるハーティガン。
彼らを、ジェシカ・アルバ、デヴォン・青木、ブリタニー・
マーフィ、ロザリオ・ドースン、カーラ・ギグノらの演じる
娼婦たちが囲み、さらに、ベネチオ・デル=トロ、イライジ
ャ・ウッド、ジョッシュ・ハートネット、ニック・スタール
らが敵役で登場する。
この顔ぶれが、ロドリゲスがこれを撮ると言った途端に、一
も二もなく参集したというのだから、この原作及び監督の魅
力は相当のものだったということだろう。
また、3つの物語は、それぞれが復讐であったり、愛しい人
を守る戦いであったり、状況に対する防御であったりといろ
いろだが、そのいずれもが男女の純愛に彩られ、一方、男た
ちはその愛のため、自らを省みず戦いの場に赴くと言う展開
だ。
現代では描き難くなった純愛の物語、しかもこれが、原作者
自身の指揮する映像美と、ロドリゲスの強烈なヴァイオレン
スアクションで描かれるとあれば、これは確かに俳優たちに
とっては魅力的な企画だったに違いない。
そして完成された作品は、僕は残念ながら原作を知らないの
だが、知る人によると、描かれた映像そのものからカメラの
アングルに至るまで、全てが完璧にミラーの世界になってい
るということだ。もちろん、それがミラーを共同監督に呼び
入れた目的という作品だ。
なお、撮影はテキサス州オースティンにあるロドリゲスの自
前のスタジオで行われたものだが、HDで撮影された全ての
シーンにディジタル処理が施され、モノクロの画面の一部に
だけ着色がされたり、コントラストが強調されるなど原作コ
ミックスの画調が見事に再現されている。
ディジタル処理とはこんな風にも使えるという実証を行って
いるような、ある意味非常に実験的な作品でもある。しかし
その実験は見事に成功していると言えるだろう。
1967年に大島渚監督が白土三平原作『忍者武芸帳』を、原作
コミックスの駒絵のモンタージュだけで映画化したことがあ
る。その時にも斬新な映像に感激したものだが、本作はさら
にそれを究極に進めたものとも言える。
アニメ化でも実写化でもない、コミックスの新しい映像化の
方法が提示された作品。すでに続編の製作も決定しており、
原作は、全7巻で完結されているようだが、その全貌を見た
くなるような作品だ。
『愛を綴る詩(仮題)』“Yes”
『耳に残るは君の歌声』などのイギリスの女流監督サリー・
ポッターの最新作。
北アイルランド・ベルファスト生まれの女性と、レバノン・
ベイルート生まれの男性が、ロンドンで巡り会ったことから
始まる運命のドラマ。
女性は幼い頃にアメリカに移住して、そこで育ち結婚もした
が、夫婦生活は破綻している。そして義理で出席したパーテ
ィで、料理人として働く男性と出会う。男性は、本国では外
科医だったが、思想の違う患者の治療を禁じる国に幻滅し、
国を捨てた。
女性は、宗教嫌いの祖母に育てられたために無宗教だが、男
性は国に幻滅しても宗教は捨てられない。そしてそれぞれ本
人との関わりは無くても爆弾テロの陰がつきまとう。宗教も
主義も主張も異なる2人の恋愛。ある意味現代の縮図のよう
な物語が展開する。
そして、脚本も手掛けるポッター監督は、この物語の台詞を
全て韻を踏んだ韻律詞の形式で書き上げている。
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07月30日(土)
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