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On the Production
by 井口健二
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■第91回
だ。そこで、何とかその間隙を突いてもらいたいと言う感じ
ではあるが、あまり拙速に作られても困るものだし、いろい
ろ悩むところだ。
* *
以下は、いつものように製作ニュースを紹介しよう。
まずは、上の記事でも触れたデイヴィッド・フィンチャー
監督の情報で、2002年公開の“Panic Room”(パニック・ル
ーム)以来、新作の無かった監督に、今年2月1日付の第80
回で紹介した“Zodiac”に続けて、“The Curious Case of
Benjamin Button”の計画も、ワーナー+パラマウントの共
同で進められることが発表された。
後者の“Benjamin Button”については、ここでは紹介し
ていなかったようだが、“The Great Gatsby”(華麗なるギ
ャツビー)などのF・スコット・フィッツジェラルド原作の
短編小説を、“Forrest Gump”などのエリック・ロスの脚色
で映画化するもの。年齢が徐々に若返って行くという不思議
な状況に陥った50代の男性が、30代の女性に恋をするが…と
いう特殊な状況の中での男女の恋愛が描かれるものだ。
そしてこの物語を、ブラッド・ピット、ケイト・ブランシ
ェットの共演で、ニュー・オーリンズを舞台に描く計画とな
っている。因にピットとフィンチャーは、“Seven”“Fight
Club”に続いて3度目の顔合せになる。
なおこの計画は、実はパラマウントとワーナーの共同製作
では、“Zodiac”より先に進んでいたものだが、VFXの多
用による製作費の高騰などが予想されて頓挫していた。しか
し今回の発表で、この作品も、“Zodiac”の製作完了後の来
年10月に撮影開始されることになったようだ。フィンチャー
としては本当に念願の作品だったようで、無事完成すること
を期待したい。
一方、“Zodiac”については、主人公の捜査官を演じるマ
ーク・ラファロ、新聞記者役のロバート・ダウニーJr、共演
のジェイク・ギレンホール、アンソニー・エドワーズらに加
えて、ゲイリー・オールドマンの出演が決定され、今年9月
の撮影開始が発表されている。なおオールドマンが演じるの
は、サンフランシスコ在住で「不法行為の帝王」とまで呼ば
れたメルヴィン・ベリという弁護士の役、彼は、1969年に殺
人鬼からのクリスマスカードを兼ねた犯行予告の手紙を受け
取った人物ということだ。
* *
お次は、1972年にジョージ・ロイ・ヒル監督で発表された
“Slaughterhouse 5”(スローターハウス5)などの原作者
カート・ヴォネガットが1963年に発表した“Cat's Cradle”
(猫のゆりかご)を映画化する計画が、レオナルド・ディカ
プリオのプロダクションから発表された。
この作品は、常温で水を結晶化させる新たな構造の氷(ア
イス9)を巡る終末的な地球の姿を描いたもので、一時はノ
ーベル文学賞の呼び声もあったアメリカ人作家の出世作であ
り、代表作とも呼ばれている作品の一つだ。
物語は主に、カリブ海に浮かぶ小島国サン・ロレンゾで進
む。その島にはボコノン教と呼ばれる独自の宗教があり、そ
の教えによって国の政治も経済も成立しているのだが、その
裏にはアイス9(それは一旦地上の水と接触すれば、一瞬の
内に世界中の水を凍結させ、人類を破滅に導く)による究極
の終末思想が形成されていた。このボコノン教の思想が一時
は学生の間でも大いに持て囃されたものだ。
そして今回はこの脚色を、クライヴ・カッスラー原作の映
画化“Sahara”(サハラ)の脚色を手掛けたばかりのジェー
ムズ・V・ハートと、彼の息子のジェイクが担当することに
なっている。因に父親は、ロシア生まれの女流作家エイン・
ランドが1957年に発表した社会主義に屈したアメリカを描い
た近未来小説“Atlas Shrugged”の脚色も、『サハラ』を製
作したボウルドウィン宛に手掛けているようだ。
なお、ディカプリオは先にワーナーと優先契約を結んで、
新作の“The Departed”は同社で製作されているが、本作の
製作に関しては未定のようだ。
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07月15日(金)
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