ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459620hit]

■ライフ・イズ・ミラクル、ワイルド・タウン、HINOKIO、樹の海、マラソン
れで充分というところだろう。因に、オリジナルと異なる片
仮名の邦題は、MGM本社の指示によるという話を小耳に挟
んだ。                        
                           
『HINOKIO』                  
軽量化のため一部が檜で作られたロボット。と言っても、S
Fに登場するような独立した意識を持った物ではなく、不登
校の少年の替りに学校へ行くだけの遠隔操縦の装置に過ぎな
いが…このロボットを通じた少年と小学校の同級生たちとの
交流を描いた物語。                  
このロボットは、歩いたり、釣りをしたりと、そこそこの運
動能力を持ち、見聞きしたものは少年に伝えるが、声は少年
がキーボードに打ち込んだものが音声合成される。つまり少
年からの意思表示は、すべて間接的に行われる仕組みになっ
ている。                       
なるほどこれは巧い設定を考えたもので、この仕組みなら周
囲に対して心を閉ざした少年でも、ゲーム感覚で現実世界と
の接触を行うことが出来そうだ。そして学校では、優等生や
がき大将の同級生が、いろいろな思惑でこの「ロボット」と
つきあうことになるが…                
上記の設定もさることながら、この作品の感心したところを
挙げるのならば、まず、物語が終始徹底して子供の目線で描
かれていることだろう。                
この手の子供を主人公にした作品では、どこまで子供の目線
を保って描けるかが勝負だと考える。それに成功した最高作
は、言うまでもなく『E.T.』なのであって、そこでは、母
親の問題など多少は大人の話も出てくるが、ほとんどは少年
の目線が貫かれていた。                
しかし、大人の脚本家が物語を作っている以上、この少年の
目線を保つことは至難の技のようで、大抵の作品では、結末
近くなると子供が妙に訳知り顔になって、大人の発言や行動
をして終ってしまうことが多く、がっかりさせられてしまう
ものだ。                       
この作品に関しては、事前にシノプシスを読んだ限りでは、
引き籠もりの問題やいじめの問題が扱われていて、正直に言
って大人の論理がまかり通りそうなものだった。しかし、映
画はそのようなものに陥ることなく、見事に子供の論理で進
められていた。                    
確かに大人の論理も其処比処に見え隠れはするが、それがス
パイス程度に押さえられているのは、さすが『水の旅人』の
末谷真澄と、「アンパンマン」シリーズの米村正二が脚本に
協力した成果と言えるのだろうか。特にゲームを絡めた辺り
に巧さを感じた。                   
以下、ネタバレがあります。              
ただ、子供の目線を貫こうとした結果、説明不足の面が生じ
ていることは否めない。そのほとんどは、物語上でいかよう
にも説明がつくもので問題はないが、一点気になったところ
は、ロボットの破壊が自殺を連想させるところだろう。  
上にも書いたように、この作品に登場するロボットは遠隔操
縦の装置に過ぎない。この事実は、操縦している少年が一番
判っているはずで、従ってこのシーンは、別の要素によって
重大な事態にはなるが、本来は少年がロボットを破壊した行
為に過ぎないものだ。                 
しかし、観客にそれを理解させるだけの説明が成されていた
かどうか。確かに実験中のロボットとの会話が、実は助手と
の会話であることが明らかにされるなど、それなりのシーン
は描いているが、このシーンでも別の感覚も描かれていたも
のだ。                        
正直に言って、僕は自殺という行為に対して非常に強く嫌悪
感を持つ。だから、映画の中で自殺を連想させるシーンが登

[5]続きを読む

04月30日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る