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On the Production
by 井口健二
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■ミリオンダラー・ベイビー、バス174、皇帝ペンギン、マイ・リトル・ブライド、初恋のアルバム、ザ・リング2、Little Birds
だった女性の証言に多くが割かれており、その衝撃的な結末
に向かっての緊張感あふれる作品になっている。
それは良いのだが、正直な感想を言うと、主張がいまいち不
明瞭な感じの作品にもなってしまっている。    
つまり犯人の実像を追って行く内に、話はどんどん社会問題
の告発に偏って行くのだが、それがバスジャック事件に揺り
戻されて終ることで、せっかく炙り出した社会問題の告発が
中途半端に終ってしまったようにも感じられるのだ。   
刑務所の劣悪な実体などは、それだけで別のドキュメンタリ
ーにしても良いくらいなものだが、それをあえて短く織り込
んで描いたために、逆に舌足らずに感じられてしまう。  
実はこの文章を書こうとしたときに、ブラジルの悪徳警官が
市民数10人を虐殺したというニュースが伝えられた。実際に
ブラジルの一般警官のほとんどは、このような悪徳警官なの
だそうで、それはこの映画で描かれた通りのものだったよう
だ。                         
しかし映画では、その告発も中途半端に感じられた。特にこ
の問題は、犯人の実像に密接に絡むものでもあり、できれば
この問題はもっと克明に描いて欲しかったところだ。   
製作を進める内に内容が膨らんでしまったのかも知れない。
しかし、いろいろな要素を詰め込みすぎた感じも持つ。しか
もそれぞれが重要な問題であるだけに、余計に勿体無い感じ
がするものだ。ただし、こういった事実を知る上で貴重な作
品であることは確かだ。                
                           
『皇帝ペンギン』“La Marche de L'Empereur”      
南極の厳冬下で行われる皇帝ペンギンたちの産卵と抱卵、そ
して子育ての姿を、1年以上の撮影期間で追ったドキュメン
タリー作品。気温氷点下40℃、時速250kmのブリザード、そ
んな厳しい条件の下で、子孫を残すための壮絶な闘いが繰り
広げられる。                     
映画は、食料豊富な海を出て営巣地へ向かう旅から始まる。
雪原を列を作ってよちよちと歩く姿や、腹ばいでの滑走は愛
らしいものだが、それは取り残されれば死と直面する過酷な
旅。しかし本当の試練はここからだ。          
結局、地上での行動力の弱さで、ペンギンたちは外敵から身
を守る術として厳冬下での産卵を強いられている。だが、厳
寒の環境の下では、卵を外気に曝すことは死を意味する。こ
のため卵は常に親鳥の足の甲に乗せていなければならない。
産卵された卵は、最初は雌の足の甲で抱卵される。しかし産
卵で体力を消耗した雌は直ちに捕食のため海へと向わなくて
はならない。そこで雌から雄へ卵の受け渡しが行われるが、
これに失敗すると卵は直ちに凍結死してしまう。  
さらに卵を受け取った雄は、その後の雌が捕食から戻るまで
の約120日間を絶食、立ち続けで過ごさなければならない。
そこに容赦なく吹きつけるブリザード。防寒のためよちよち
歩きで集団を作ろうとする雄が卵を取り落としてしまうこと
もある。                       
一方、辿り着いた海で開放されたように泳ぎ、捕食する雌た
ち。しかしそこには、アザラシなどの敵も待ち構える。雌の
死は帰りを待つ家族の死をも意味する。         
そして立ち続けで待つ雄の足下では雛が孵り始める。だが孵
った雛はまだ地上に出ることはできない。厳しい自然は雛の
か弱い体力をあっという間に奪ってしまうのだ。雛鳥と雄は
餌を貯えた雌の帰りを待ち続ける。           
このように、次々に襲ってくる苦難の様子が、冷静なカメラ
ワークで捉えられて行く。               
1972年に公開された“Mr.Forbush and the Penguins”(二
人だけの白い雪)というイギリス映画がある。この作品は、
1980年の『復活の日』より10年近く前に、恐らくは南極で本
格的なロケーションが行われた最初の劇映画だと思われるも

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04月14日(木)
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