ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459658hit]

■Movies−High #5、ザ・キーパー[監禁]、生命(いのち)−希望の贈り物、オーシャンズ12
変調が起こり始める。                 
非常にそつなく撮られていて、アマチュアの作品としては完
成されていると思うが、背景にあるはずの世界観が見えてこ
ず、何か小さくまとまり過ぎているような印象を持つ。  
内容的には『マタンゴ』を思い出すが、その見方で言うと有
りがちな話にも見える。自業自得みたいな思想が根底にある
ように感じるが、その辺がうまく現れていないと思う。  
「Circle Game」                    
安全圏であるサークルを辿りながら町を駆け抜けるゲーム。
男性の競技者は女性のナビゲーターと共に行動し、彼女の役
割は、ただ次のサークルの位置を指示することだったが… 
今まで出会ったことのない男女に、ゲームの中で人の絆が生
まれて行く。異常なシチュエーションの中で、普遍的な物語
が展開する。判り易い物語で、映像も良かった。     
でも、何かそこでとどまっている感じで、次に突き抜けて行
くものが感じられない。前の作品とは違った意味で、この作
品も小さくまとまり過ぎているような印象を持った。   
「踏み切り」                     
リストラされたことを母親にも言えない男が、ふと知り合っ
た運転手の手引きでインド料理店に行き、自分の殻を破って
行く姿を描く。                    
こういうことの起きるシチュエーションは理解する。でも、
こんなにうまく行くことがどれだけあるか、という話にもな
るし、結局寓話で終ってしまっているような印象を受ける。
それでどうなるという話でもないし、言っても仕方のないこ
とを言っているような空しさがある。監督の意図がどこにあ
るかは別として、そんなことを感じてしまった。     
「コンビニエンス」                  
日本のコンビニエンスストアの多くが家族経営によっている
という。そんなコンビニを経営する家族を描いた作品。  
監督自身がコンビニ経営の両親の下で育ったそうで、本作の
制作意図はコンビニを裏側を見せるとしているが、作品では
そこに見事なホームドラマを展開してみせている。    
何故に父親は安定した職を辞してコンビニ経営を始めたか、
などの物語が、ちょっとしたせりふや小道具から見事に浮き
彫りにされる。                    
このままコンビニエンスストアの経営者募集のキャンペーン
にでも使えそうな、完成された作品だった。       
「この窓、むこうがわ」                
登校拒否で2階の自室に引きこもっている少女と、その窓に
向かい合う部屋に住む女性。女性は、いつも少女が部屋を見
張ってくれていることで防犯になると感謝していたが…  
この作品も前の作品と同様、実にコンパクトに見事にまとめ
られていた。後半の展開も見事だし、何しろこの作品では、
展開が始まってからの反応の描き方が素晴らしい。    
ただの引きこもりの問題だけでなく、何かを成し遂げること
の素晴らしさなどもうまく描かれていた。        
「暁の花」                      
短編映画と称されるものの中で、時折見かけるのが、長編の
中の1エピソードを描いたような作品だ。この作品もそのよ
うな印象を受けるものだった。             
今年はプロの短編もいろいろ見る機会があり、その中にもそ
ういう作品はあるのだから、これも一つの表現形式かも知れ
ないが、やはり見ていてフラストレーションが起きる。  
この作品で言えば、曼珠沙華の根元に埋めた指輪はどうなっ
てしまったのかというようなことだ。この作品は、そこまで
描いてこそ完成されるもののような気がする。      
「ストロングワールド」                
ちょっと過激な若者の生態を描いた作品。無いと思うが、も
しかすると有るかもしれない物語が、うまく描かれていた。

[5]続きを読む

12月30日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る