ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■第17回東京国際映画祭(コンペティション+アジアの風)
自宅マンションの押入に隠したパソコンで、小学生の男の子
と登校拒否の女子高生が風俗チャットを始め、大成功してし
まうというお話。                   
こういうことが有り得ない訳ではないし、原作もベストセラ
ーになっているのだから、内容をどうこうと言うつもりはな
いが、それにしても幼い発想の作品だ。いまさらこんなもの
を見せられても、感動もしないし、ここから得るものなど何
もない。                       
ただの娯楽作品というのならそれでもいいが、これを映画祭
に出品するというのは何かの間違いだろう。今回は日本作品
の3本の内2本は間違いだった(1本は受賞しているが)と
思うが、他に出品できる作品がなかったのかと問いたくなる
感じだ。                       
昨年出品のの日本映画は、好き嫌いの問題を別にすれば、そ
れなりに意欲的な作品だったと思う。しかし今年は、何か選
考の仕方が変だったとしか言いようがない。少なくとも星取
表で下から数えて2本目と3本目の作品が日本映画というの
は問題だろう。                    
                           
<アジアの風部門>                  
『ジャスミンの花開く』                
チャン・ツイィーが、ジャスミンの中国名に準えて茉、莉、
花と名付けられた三代の母子を演じ分け、ジョアン・チェン
が、それぞれの母親(ツイィーの成長した姿)を順番に演じ
て、第2次世界大戦前から現代にいたる中国を描いたエピッ
クドラマ。                      
戦前の映画スターを夢見る少女や、戦後を力強く生き抜く女
性などを、ツイィーが可憐にまた骨太に演じ分ける。特に、
映画の巻頭での夢見る少女の姿は、『初恋のきた道』の頃を
思い出させてファンには堪らないところだ。       
その発端で、ツイィーは女手一つで切り盛りしている写真館
の一人娘。ある日映画のプロデューサーに誘われてスタジオ
を訪れ、スクリーンテストを受けて女優になるのだが…。こ
のスクリーンテストでの余りにも下手糞な演技も見ものだっ
た。                         
また、映画では主人公の暮らす写真館の名前が時代ごとに変
って行くのも、面白く時代の変化を表わしており、その辺の
端々にも良く気の使われた作品という感じがした。    
監督は、チャン・イーモウ作品の撮影監督などを務めたホウ
・ヨンのデビュー作。カメラもしっかりしているし、それ以
上に戦前戦後の中国の風物が見事に再現されている。   
物語も、ほぼ同じ話が3回繰り返されるにも関わらず、それ
ぞれの時代背景や社会情勢でまったく違う展開になる。その
辺の面白さも見事な作品だった。            
                           
『恋愛中のパオペイ』                 
現代中国を舞台にした現代的なラヴ・ストーリー。ナント映
画祭のグランプリやベルリン映画祭などでも受賞歴のある女
性監督リー・シャオホンの作品。            
ヴィデオテープに残された男が心情を吐露する映像と、その
テープを偶然手に入れた女性パオペイの恋愛関係が描かれる
が…。確かに雰囲気は伝わってくるし、主人公たちの行動も
判るのだが、何か言いたいことが伝わってこない、そんな印
象を受けた。                     
巻頭では、密集した住宅が並ぶ住宅街を取り壊して行く風景
に続いて、そこに高層ビルを建てるCGI映像が挿入された
り、海外出張する男の乗る飛行機の窓の外をパオペイが飛ん
でいる映像があったりなどで、興味は繋がれる。     
しかし全体的には単純な男女の物語の中に、それらのシーン
の脈絡がうまく溶け込んでいない感じがした。なお、音楽に

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11月06日(土)
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