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On the Production
by 井口健二
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■僕の彼女を紹介します、CEO、陽のあたる場所から、三人三色、運命を分けたザイル
一方で、今の日本は一体どうなってしまったのだと考えさせ
られる作品でもある。
なお、試写会の上映後に、監督と脚本家、それにモデルとな
ったハイアール社CEOチャン・ルエミン氏とのQ&Aが行
われ、そこではチャン氏が実名を出すことを非常に嫌がった
ということについて質問が集中した。
その答えを、チャン氏は明確にしなかったが、代って監督が
2つの諺を挙げた。
その一つは日本と同じ「出る杭は打たれる」だったが、もう
一つは、通訳によると「森から突き出した梢は強い風を受け
る」というものだそうだ。どちらも意味は同じことだと思う
が、後者には何か前向きの響きがあり、ちょっと良いなと感
じた。
『陽のあたる場所から』“Stormy Weather”
一種の自閉症と思われる女性と、女性精神科医の交流を描い
たアイスランド映画。
数年前の実話で、フランスで保護されて精神病院に収容され
た女性が、実はイギリス人であることが判明したという話が
あり、本作はその実話にインスパイアされた物語。
主人公の女性精神科医は、勤務先のベルギーの病院で一人の
女性患者と出会う。彼女は口を利かず、身元の知れるものは
何も持っていない。そして何時も一人きりで周囲のものとも
つきあおうともしない。
そんな彼女が気になる女医は、彼女の話し相手になろうとす
るが、なかなか上手く行かない。しかし徐々に治療が進み始
めたとき、彼女の身元がアイスランド人と判明し、大使館の
手で本国に送還されてしまう。
そして治療が途中であることを気にした女医は、アイスラン
ドの彼女のもとを訪ねて行くが…。
人間が生きて行くことの難しさ。そしてそれに救いの手を伸
ばすことの難しさ。果たして救いをさしのべることが正しい
のか、そんなことをいろいろ考えさせられる作品だった。
なお、アイスランドが舞台の映画というと、数年前に永瀬正
敏が主演した映画を見たことがある。その時は雪ばかりの世
界だったが、今回は雪と共に名物の火山も紹介される。
アイスランドの火山では、以前に、流れ出したマグマに冷た
い海水を掛けて人家に被害が及ぶのを食い止めたというニュ
ースが紹介されたことがあったが、今回登場するのは正にそ
の火山。記念に残されたという半壊した小屋なども紹介され
ていた。
物語は火山と直接関係はないが、厳しい現実の象徴として上
手く使われていた感じだ。
『三人三色』(韓国映画)
韓国のチョンジュ映画祭が、ディジタル映像による新しい表
現を求めて始めたアジアの監督による短編映画の競作。2000
年に開始されて5回目になる今回は、韓国のポン・ジュノ、
香港のユー・リクウァイ、日本の石井聰亙がそれぞれ5000万
ウォンの製作費で、各々30分前後の作品を製作している。
その1本目は、『殺人の追憶』などのポン・ジュノ監督によ
る『インフルエンザ』。
作品は、ソウル市内の各所にある監視カメラの映像という設
定で、そこに写る1人の男の行状が辿られる。そして、最初
はそこそこだった男が、どんどん崩れて行く姿が見事に写し
出されて行く。
もちろんこれらの映像はフェイクだと思うが、なるほどこん
なことになって行くのかという感じで、足を踏み外した男の
姿が見事に表現されていた。上映時間は今回の3本中では一
番短い28分だが、当然テンポも良いし、何しろ笑えるのが良
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10月14日(木)
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