ID:47635
On the Production
by 井口健二
[459923hit]

■エイプリルの七面鳥、ゴースト・ネゴシエーター、沈黙の聖戦、ソウ、恋に落ちる確率、赤いアモーレ、アンナとロッテ、約三十の嘘
第2に、設定を延々とナレーションする感覚も判らない。こ
れは往年のテレビ番組のパロディのつもりらしいが、時代錯
誤というか、しかもここだけパロディにしても自己満足でし
かない。もちろん中にもそれなりの衣装なども出てくるがパ
ロディが生きていない。                
他にもいろいろあるが、大体この映画は展開にいろいろなエ
ピソードが多すぎる。だからそれぞれのエピソードの底が浅
くなってしまっているし、その結果全体の印象が薄っぺらな
ものになってしまっている。              
例えば主人公が仕事を辞めたい理由も、これだけでは物足り
ないというか、ここにもっとドラマがあっていい。それに、
ちゃんと納得できるような交渉をしているシーンも、一つは
見せるべきだろう。逆に、はなわのエピソードなど何のため
にあるのか、必要性が感じられない。          
と、ここまで脚本の問題点を羅列したが、多分、この脚本は
読めば面白かったのだろうと思う。しかしそれは、読む側が
行間を埋めていたからで、その行間を埋めて固定した映像に
して提示するという作業が、本作では監督によってなされて
いない。                       
大体、試写で配られたプレス資料に監督の言葉が無い辺りか
ら、監督のこの作品に対する思い入れの無さが見えてくる。
本職はテレビの監督らしいが、とりあえず脚本通りに撮りま
したでは、この手の作品は面白くはならない。      
『犬猫』は、製作費的にはもっと低予算だったろうと思える
が、あの作品には監督の思い入れがいっぱい詰まって、それ
が見る側に伝わってくる嬉しさがあった。しかしそのような
感覚がこの作品からは伝わってこない。         
それと、本来、日本映画においてプロデューサーは脚本を兼
ねるべきではないと思う。しかも新人監督に撮らせるような
作品では…。結局この映画では、その辺から全てが野放しに
なってしまって、作品に文句を言える人が内部にいなかった
ところに問題がある。                 
再びプレス資料によると、プロダクションノートを寄稿して
いるアシスタントプロデューサーの人には、それなりの感覚
があったようなのだが、その感覚を活かせるような製作体制
を作ることが必要のように感じられた。         
以上、必要があると感じるのでここに記す。ただし僕は『犬
猫』は好きだし、この映画も嫌いではない。       
                           
『沈黙の聖戦』“Belly of the Bast”          
スティーヴン・セガールと、『HERO』『LOVERS』
のアクション監督=チン・シウトンが手を組んだアクション
作品。                        
タイを舞台に、娘を反政府組織に誘拐された元CIAのエー
ジェントが、娘の救出のために作戦を繰り広げる。    
セガールは実際に元合気道の師範で本格的な武道家。一方、
シウトンはワイアアクションで時代を築いた人。この2人が
手を組んで一体何が始まるかというところだが、残念ながら
まだ完全にしっくりとは行かなかったようだ。      
特に前半は、セガールは深呼吸と合気道の形をしているだけ
で、相手が勝手にすっ飛ぶといったワイアアクションが目立
ち、水と油のような感じがした。            
しかし後半、トム・ウーとの絡みで1対1の勝負となったシ
ーンや、その前の女優の名前は不明だが、謎の女レナとの闘
いの辺りは、多分相手の俳優がシントウFXを判っている面
もあるのだろうが、それなりの見せ場になっていた。   
この部分をもっと作り込んで、映画の全体に活かせるように
なれば、面白いアクションが生み出される可能性はあるとも
感じた。                       
セガールも、ハリウッド大手を離れてからはなかなか良い作

[5]続きを読む

09月14日(火)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る