ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■スパイダーマン2、トゥー・ブラザーズ、フォッグ・オブ・ウォー、恋の門
元々アノーは、『小熊物語』の構想中からトラを主人公にし
た物語も考えており、その時はクマの方が親しみやすそうだ
考えて、1988年の作品が作られたそうだ。従って、何時かは
トラの物語も作りたいと想い続けていたということだ。  
その想いがようやく遂げられた訳だが、お話は『小熊物語』
と同様、実に童話めいたと言うか、一世代前のディズニーの
ような感覚だ。                    
とは言え、このような感覚の作品が作り難くなっている時代
に、果敢にこういう作品を作り上げるアノーの心意気は買う
べきだ。さらに本作は映画の出来も優れているのだから、こ
れは文句の付けようがない。しかもフランスでは大ヒットだ
そうだ。                       
自然に対する人間の横暴さや遺跡破壊の問題も巧みに描かれ
ているし、当然文科省の特選を付けたいところだが、あれを
得るにはかなりの大金が掛かるようなので、どうするか。そ
んなもの無くても、良い映画でいることに変わりないが…。
なお行政官の息子の役を、“Finding Neverland”(旧題J.B.
Barry's Neverland)や、“Five Children and It”(砂の
妖精)に出演し、6月に撮影の始まった“Charlie and the
Chocolate Factory”の主役に抜擢されたフレディ・ハイモ
アが演じている。                   
                           
『フォッグ・オブ・ウォー』“The Fog of War”     
ケネディ、ジョンソン時代に米国防長官を務めたロバート・
S・マクナマラの回想インタビューに基づくドキュメンタリ
ーで、今年のオスカーを受賞した作品。         
ケネディ時代のキューバ危機と、ジョンソン時代のヴェトナ
ム。この2つの戦争の裏側を語って、結果的に現在のブッシ
ュによるイラク戦争へ大きな警鐘を鳴らしている。    
生涯のほとんどを戦争に関ってきたとするマクナマラは、こ
のインタビューの中で11の教訓について語っているが、その
最初に挙げているのが、「敵の身になって考えよ」というこ
とだ。                        
その実例がキューバ危機で、当時のケネディ政権は、フルシ
チョフをよく知るソ連問題顧問の証言などから彼の立場を分
析し、核戦争の危機を脱することに成功する。しかしそれは
本当に紙一重の事態だったことが、後にカストロとの会談で
明らかになる。                    
一方、ヴェトナム戦争では、北ヴェトナム政府の考えを読み
違え、ずるずるを泥沼に填り込んでしまう。これは後のヴェ
トナム高官との会談で、彼らが自国を開放するためには全員
が死ぬことも厭わないと聞かされたマクナマラの驚きが全て
を物語る。                      
もちろんこの作品は、マクナマラの回想録であり、現在行わ
れている戦争については何も語ってはいない。しかしこの2
つの事例を当てはめたとき、現在行われている戦争の行く末
が何となく判ってくるような感じがする。        
なお、マクナマラはこの作品の中で、第2次大戦での日本本
土の各都市への絨毯爆撃が、実は彼の進言によるものだった
ことも明かしている。                 
そんな戦争の裏も表も知り尽くした男が、後半生は世界銀行
総裁として世界の貧困と戦った。もちろん毀誉褒貶の大きい
人物ではあるが、感情に左右されない戦略としての戦争を常
に考えていたことは確かなようだ。           
果たして現在行われている戦争、またそれに加担している属
国に戦略があるのか、そんな想いが沸き上がってきた。  
                           
『恋の門』                      
俳優や作家としても活躍している劇団「大人計画」主宰・松
尾スズキの長編初監督作品。              

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06月30日(水)
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