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On the Production
by 井口健二
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■ハリー・ポッターとアズカバンの囚人、雲−息子への手紙、父、帰る、危情少女、誰も知らない、16歳の合衆国、シュレック2
処理による時間の流れの変化も付けて美しく描かれる。この
ディジタル処理と編集作業に、製作費の15%が費やされたと
いうことで、その映像への思い入れが判る。
ただ、今回この作品を字幕で見ていると、字幕を読まなけれ
ばならないために、どうしても映像の全てを追い切れないと
ころがある。6カ国語のナレーションが用意されたのも、そ
の辺の理由があるのだろう。できれば日本語のナレーション
も付けてもらって、この映像を堪能してみたかった。
『父、帰る』“Vozvrashchenie”
2003年のヴェネチア映画祭でグランプリ金獅子賞を受賞した
ロシア映画。
長く不在だった父親が12年ぶりに帰ってくる。しかも突然。
10代の2人の少年が遊びから家に帰ると、そこにはすでにベ
ッドで眠りこける父親の姿があるのだ。
その父親は、2人の息子を小旅行へ連れ出す。それは息子た
ちとの絆を取り戻す目的だったのかも知れない。しかし、多
少は父親の記憶のあるらしい上の子は、徐々に父親に打ち解
けるが、下の子にはそれができない。
一方、父親も子供への対し方が判っていない。この親子の関
係が、物語の緊張を嫌が上にも高め続ける。そして父親の取
る謎の行動。やがて親子は、大きな湖を渡って、無人島へと
辿り着くのだが…。
監督も、製作者も、カメラマンも、作曲家も、全員が映画は
ほとんど素人と言うロシアの民間テレビスタジオで製作され
た作品。その作品が、名だたる作家の集まった映画祭でグラ
ンプリを受賞した。
しかし、その理由は映画を見れば明らかだ。新人とは言え、
映画の歴史から学び尽くした知識の深さ、そしてそれが知識
だけで終わらない映画への愛情、さらに真摯な態度。それら
が画面の隅々から感じ取れる。
東京国際映画祭でも、ここ数年何本かのロシア映画を見てき
たが、到底映画への愛情が感じられなかった作品も含め、い
ずれも僕は気に入らなかった。しかしこの作品には、何か懐
かしいロシア映画の味と、その一方で新鮮さも感じさせるも
のがあった。
映画は、父親と特に下の息子との関係を巧妙に描いて行く。
それが全く不自然でなく、それでいてドラマティックなのは
見事だった。この作品が、新しいロシア映画の歴史を作り始
める、そんな予感がした。
アンドレイ・タルコフスキーにオマージュを捧げているよう
な床に水の撒かれた屋内のシーン。そんなところも好ましい
作品だった。
『危情少女』“危情少女”
2000年の『ふたりの人魚』で国際的に評価されたロウ・エイ
監督が、1995年に発表した監督デビュー作。
自分の見る悪夢の原因を探ろうとした少女の行動を描いた中
国映画史上初(?)の本格恐怖映画。中国でも、幽霊ものの
映画は戦前からいろいろ作られていたと思うが、いわゆる現
代風のホラー映画では最初の作品ということのようだ。
毎夜悪夢にうなされる少女。悪夢に現れるのは、雲行きの怪
しい空模様の下、無表情に彼女を見つめる街の人々、そして
古びたアパート。やがて少女は、実在したそのアパートを探
し当てるが、今度はそのアパートで死んだはずの母親が夢に
現れ始める。そして悪夢の続きは、彼女の周囲で過去に起っ
た悲劇を再現して行く。
まあ、いろいろ言えることはあるのだけれど、映画の全体の
雰囲気は中々良い感じのものだった。
物語の辻褄が前半と後半とで、ちょっと合わなくなっている
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06月14日(月)
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