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On the Production
by 井口健二
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■第62回
ターナーが分離した1839本を除いた上で、UA作品を加えた
ものと考えられ、辻褄は合う。また、買収総額の50億ドルと
いうのは、2年前の情報で4700本のMGM作品の総額が70億
ドルと言われていたデータもあり、妥当な線と言えそうだ。
ところで、ソニーによるMGM買収の話は、実は今回が初
めてではない。ソニーは1989年にコロムビア/トライスター
を買収したが、その前にはMGMかディズニーを対象に買収
計画が進められたことがある。つまりターナーがMGMの売
却を進めていた頃のことだ。
しかし、当時は上記の代表作も含めてハリウッドの至宝と
呼ばれていたMGMが外国企業に売却されることについては
アメリカ世論の抵抗も強く、ソニーは断念せざるを得なかっ
た。これはディズニーについても同様だったものだ。確か、
「レオ(MGMのシンボルのライオン)と、ミッキー(マウ
ス)を外国人にするな」というようなキャンペーンだったと
記憶している。
そして結局ソニーは、自由の女神(コロムビア)を買収す
ることになるのだが(因にコロムビアは、当時のハリウッド
では一流とは見られていなかった)。以来ディズニーが急速
に盛り返して今やハリウッドのトップに君臨するのに対し、
MGMがその後も低迷を続け、今回は何の抵抗の声も聴かれ
無いのには、隔世の感としか言いようがない。
とは言え、今回の買収はまだ成立してはいないのだが、今
後この話がどのように進展するかは気になるところだ。
* *
さて以下は、いつものように製作情報を紹介しよう。
まずはスティーヴン・スピルバーグの情報で、夏にアテネ
オリンピックの開催を控えているこの時期に、1972年のミュ
ンヘンオリンピックで発生した事件の映画化を、ドリームワ
ークス製作、スピルバーグ監督で行うことが発表された。
この事件は、当時のオリンピックに参加していたイスラエ
ル選手団が、選手村でパレスチナゲリラに襲われて人質とさ
れ、最終的に代表選手も含めたかなりの人命が奪われたとい
うもの。もちろん、事件はイスラエル=ユダヤとパレスチナ
の抗争を受けてのものだが、起きた場所がドイツ国内だった
だけに、一層の悲劇として世界に報じられたものだ。
なおこの事件については、過去にも映画化された記憶があ
るが、今回はこの事件の全容を、『フォレスト・ガンプ』の
エリック・ロスの脚本で描くもので、すでにスピルバーグは
出演者の一人として、『シンドラーのリスト』のベン・キン
グズレーの起用も決めているそうだ。そして、スピルバーグ
の関係者の情報では、すでにヨーロッパ地域でのロケハンも
完了して、6月からの撮影が準備されている。
なお、スピルバーグの監督作品では、トム・ハンクス主演
の“Terminal”の公開が6月に予定されており、その後には
“The Rivals”と、トム・クルーズ主演の“The War of the
World”の計画が発表されているが、本作はその前に製作さ
れるものだ。スピルバーグとしては“Indiana Jones”第4
作の計画も頓挫したところで、久々のユダヤ人社会向けの作
品ということになるが、このタイミングは、ちょっとやりす
ぎの感じもしないでもない。
* *
続いては、こちらも“Indiana Jones”の関係者で、最近
はちょっとひねった役柄の多かったハリスン・フォードが、
本格的にヒーローモードに復帰する企画が発表された。
作品の題名は“The Wrong Element”。世界的規模の銀行
を舞台に、保安担当のトップを務める主人公が家族を誘拐さ
れ、誘拐犯に銀行から3700万ドル盗み出すことを要求される
というもの。もちろん、ヒーローである主人公がそれを実行
する訳はないが、窮地に陥った主人公が、これにどう対処す
るかが描かれる作品だ。
ジョー・フォートの脚本で、監督はまだ決っていないが、
フォード主演の『エアフォース・ワン』を手掛けたビーコン
社とワーナーの製作配給で進めることになっている。なおこ
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05月01日(土)
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