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On the Production
by 井口健二
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■白いカラス、父と暮らせば、あなたにも書ける恋愛小説、ジャンプ、キル・ビルvol.2
介された。
そして映画を見て感じることは、監督が原作の舞台をものす
ごく大切なものとして扱っていることだ。僕はその舞台も見
てはいないが、映画がほぼ舞台を完全にフィルムに写し替え
ていることは感じられる。それは一つの台詞も揺るがさない
という感じだ。
舞台劇らしい長台詞と広島弁の微妙な言い回し、これらは恐
らく舞台でも評判を呼んだものだろうが、それらを映画でも
忠実に再現している。それを成し遂げた主演の宮沢りえと原
田芳雄にも拍手を贈りたいところだ。
しかもそこに、映画でしか表現しえないものが見事に取り入
れられている。
それは、原爆投下の数日後に撮られた有名な白黒写真の中に
行き交う人々の姿があったり、3年後のまだ廃虚の町並の中
を登場人物の載ったオート三輪が走ったり、というようなも
のだが、それらのVFX映像が、違和感無く取り込まれてい
るのも素晴らしかった。
原爆投下と、その後に続く恐怖を見事に描き切った作品。こ
の映画が、原作者の希望通り世界中で上映されることを願っ
て止まない。
『あなたにも書ける恋愛小説』“Alex & Emma”
『恋人たちの予感』のロブ・ライナー監督が、『10日間で
男を上手にフル方法』のケイト・ハドスンを主演に招いて撮
ったラヴ・コメディ。
デビュー作は成功したものの2作目でスランプに陥った作家
が、30日間で第2作を完成させなくてはならなくなり、その
ために口述速記者を雇うのだが…。この作家をルーク・ウィ
ルスン、口述速記者をハドスンが演じる。
映画では、作家の口述する物語が劇中劇となり、そこではソ
フィ・マルソー演じるフランス人女性と、ウィルスン演じる
家庭教師の道ならぬ恋が描かれる。しかし、その物語の一部
は作者の実体験であることが判ってくる。
その物語に、最初はスウェーデン人、次はドイツ人、さらに
スペイン人、アメリカ人のメイドとしてハドスンが登場して
くる。そして物語は、彼女を含む三角関係へと発展、つまり
作家は徐々に速記者に引かれ始めて行くのだが…。
ハドスンはこれらのいろいろな国籍の役を、誇張を交えてコ
ミカルに演じている。何しろ劇中劇の設定なので誇張はかな
り強烈だが、一方、ハドスンの芸達者なところも見せてもら
える寸法で、なるほどこの映画の狙いがどこにあるかはよく
判ったという感じだ。
ゴールディ・ホーンの娘のハドスンは、見るからにハリウッ
ドのサラブレッドという感じで、どんな役も嫌み無くこなし
てみせる。
今回は、上記の作品でメグ・ライアンをブレイクさせた監督
とのコラボレーションだが、ハドスンは、すでに『あの頃ペ
ニー・レインと』で鮮烈な印象を残し、『10日間…』では
1億ドル突破のメガヒットも記録している。その彼女が、次
に何を演じるかも楽しみだ。
『ジャンプ』
佐藤正午の原作で、2000年の「本の雑誌」ベスト10で第1位
に輝いた小説の映画化。突然失踪した恋人の謎を追う男性の
姿を、ネプチューン原田泰造の主演で描く。
監督の竹下昌男はこれがデビュー作のようだが、フリーの助
監督として大林宣彦監督や根岸吉太郎監督に師事してきたと
いうことで、しっかりした映画作りはさすが現場を数多く踏
んできた人という感じだ。
原田の主演だが、本作はコメディではない。突然理由も告げ
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04月14日(水)
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