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On the Production
by 井口健二
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■第58回
に突然打ち切られ、これらの基金の大半が打ち止めになって
しまった。実際この基金では、アメリカのインディペンデン
ト系の作品などもかなり恩恵を被っていたようだが、結局放
漫経営などで資金の流れが不明朗になっていたことが、今回
の優遇処置打ち切りの根底にもあったようだ。
そしてこの影響をもろに受けたのが、1月15日付の第55回
で紹介したジョニー・デップ、ジョン・マルコヴィッチ共演
の“The Libertine”で、2200万ドルとされた製作費の30%
程度がこの基金に依っていたために、前回紹介した2月23日
からの撮影予定は実行不能になってしまった。実際、これ以
前に撮影が開始されていた作品では、イギリス政府の援助が
与えられて生き延びた作品もあったようだが、本作は撮影前
ということで、その対象にもならなかったものだ。
ということで大変な事態になってしまった訳だが、さすが
デップ、マルコヴィッチ共演という注目の作品には、直ちに
別の資金提供者が現れ、多少の製作体制に変更は生じたもの
の、3月3日に撮影が開始されることが発表された。
その変更というのは、不足する資金の提供をイギリス本土
とアイルランドの間に浮かぶマン島の映画基金が行うという
もので、その代わりに、当初ロンドンのスタジオで行う予定
だったセット撮影を、マン島のスタジオで行うということに
なったものだ。
因にマン島では、マルコヴィッチが故スタンリー・クーブ
リック監督にオマージュを捧げたと言われる前作“Color Me
Kubrick”を撮影していたということもあり、話し合いは順
調に進められたようで、最終的にイギリス政府の援助が得ら
れるか否かは微妙なところもあったようだが、一気に思い切
ったというところのようだ。
と言っても、デップ、マルコヴィッチの共演ともなれば、
インディ作品であっても世界中から引き合いは間違いない。
しかもその作品には、昨年度実写ナンバー1のヒット作に主
演したデップが、以前にも紹介したように破格に安い出演料
で出ている訳で、資金を提供する側にとってはこんなに美味
しい話は滅多にないと言えるもの。マン島側も、実に良い選
択をしたと言えそうだ。
なおマン島は、24時間のオートバイレースが行われること
などでも有名だが、イギリスの一部でありながら、イギリス
連合王国の正式名称をGreat Britain and Man Isleと名乗ら
せたり、貨幣や郵便切手も独自に発行するなど、自治性はか
なり高い土地ということだ。
* *
続けてジョニー・デップの情報で、ユニヴァーサルが進め
ている元Elle Franceの編集者だったジャン=ドミニーク・
ボウビイの自伝“The Diving Bell and the Butterfly”の
映画化にデップの主演が交渉されている。
この作品は、1995年、当時43歳の現役編集者だったボウビ
イが突然脳溢血で倒れ、全身麻痺に陥って、かろうじて左目
の瞬きだけができるという状態になったというもの。原題の
Diving Bellというのは、こういう状態になったことを指す
医学用語ということだ。
そしてボウビイは、左目の瞬きだけで、アルファベットを
一文字ずつ指示して、彼自身の思い出や夢を綴った自伝を作
り上げたということで、彼はこの自伝が出版された2日後に
亡くなっている。
一方、映画化については、1997年に作品が紹介された直後
からソニーとドリームワークス共同で、ロン・バスの脚色、
スコット・ヒックスの監督による計画が進められたが、結局
バスの脚色が完成せず、計画放棄の発表がされていた。
その計画をユニヴァーサルが引き継ぎ、今度は『戦場のピ
アニスト』のロナルド・ハーウッドの脚色、『バスキア』の
ジュリアン・シュナベル監督で進めることになったものだ。
なお、実際の契約はハーウッドと結ばれているだけのよう
だが、彼の脚色には数多くの監督が映画化を希望したという
ことで、その中からシュナベルが選考されたということだ。
またデップは、監督の第2作の『夜になるまえに』に出演し
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03月01日(月)
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