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On the Production
by 井口健二
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■ゴッド・ディーバ、スイミング・プール、イン・ザ・カット、リアリズムの宿、スクール・オブ・ロック、卒業の朝、上海家族
ょっと蓮っ葉な感じが、最初は違和感を感じさせない訳では
ない。しかし、それが逆に最後に活かされているというとこ
ろでもあった。
それにしても、結末の解釈がいろいろできて、いつまでも楽
しめる作品だ。
『イン・ザ・カット』“In the Cut”
この題名で、カットという言葉が何を意味しているのか疑問
だったが、まさかバラバラ殺人事件の話とは思わなかった。
もちろん他の意味も含んでいるが。
主人公は、ニューヨークのスラム街で英語の授業をしている
女性教師。作家志望でもある彼女は、生徒にスラングなどの
言葉集めもさせている。そんな彼女が、生徒と会うために立
ち寄ったバーで、男女の営みを目撃してしまう。
数日後、彼女の住むアパートに刑事が現れ、バラバラ殺人事
件の聞き込みを始める。その被害者は、彼女がバーで見かけ
た女性だった。しかも刑事は、単に聞き込みをするだけでな
く、主人公に好意を抱いていることを告白する。
こうして、彼女の生活の中に事件が入り込んでくる。しかも
その事件は、連続殺人へと発展する。
刑事は登場するが、映画は事件を捜査しているところを描く
訳でもなく、推理ものとしては中途半端な感じは否めない。
それに真犯人もちょっとアンフェアな感じもする。
でも、ジェーン・カンピオン監督の作品は、別段、推理を描
くことが目的ではないし、結局事件に翻弄され、その中で成
長して行く女性を描いている訳で、しかもその主人公をメグ
・ライアンが演じているのだから、これは正に鬼に金棒だ。
決して若くはないのに、何か浮ついた感じの主人公が、いろ
いろな出来事の中で、徐々に足が地に着いて行く。そんな感
じが見事に描かれていた。
それにしても、ライアンの大胆な演技には恐れ入った。最近
の映画には珍しくぼかしや、フィルムが削られた画面も登場
して、しかもそういうシーンのいくつかはライアンが演じて
いるのだから、本当に思い切った作品と言えるだろう。よく
がんばったものだ。
『リアリズムの宿』
つげ義春の原作から、『ばかのハコ船』の山下敦弘監督が映
画化した作品。
実は、山下監督の前作は試写状をもらいながら見に行ってい
なかった。つげ原作の映画化も過去に何本かあるが、これも
見てはいない。これらは僕の食わず嫌いによるところだ。そ
ういう組み合わせの作品を今回は見てしまった。
それで感想は、面白かった。
主人公は、面識はあるが今まではろくに話をしたこともない
2人の男。この2人が共通の友人に誘われて冬の鳥取にやっ
てくる。しかし、共通の友人は現れない。こうしてほとんど
知らない者同士、2人の男のロードムーヴィが始まる。
中国地方日本海側が舞台のロードムーヴィということでは、
大島渚の『帰ってきたヨッパライ』を思い出した。ヒット曲
をモティーフにしたこの作品は、期待して見に行った割りに
は面白くなく、がっかりしたものだが、今回は面白かった。
主人公2人の設定が映画青年で、一人は脚本家、一人は監督
という辺りから、映画ファンの気持ちをくすぐる。実際、こ
の2人の会話が実にありそうで、タイトル通りリアリズムな
のだが、それがまた本当のリアルさでない辺りが巧く作られ
ている。
それにしても日本映画のコメディ作品で、声を上げて笑えた
のは久しぶりのことだ。『ゲロッパ』も『1980』もそれ
なりに面白かったが、声を出して笑うほどではなかった。
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02月29日(日)
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