ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460222hit]

■大脱走、妄想代理人、かまち、パピヨンの贈りもの、ランダウン、真珠の耳飾りの少女、ケイナ、H、恋愛適齢期
ションシリーズ化したときのセルの使い回しと共通する話。
確かに今はディジタルで手軽だろうが、手塚さんはそれをア
ナログでやっていたのだと考えると、その凄さも改めて思っ
てしまった。

『かまち』
1977年に17歳で死んだ山田かまちが残したメッセージを基に
描いた作品。詩と絵を描くことが好きで、ビートルズが好き
だった少年の残したメッセージがスクリーンに甦る。
僕は今までかまちの作品に触れたことはなかったが、この映
画の中で描かれるメッセージが、見事に現代に通用すること
に驚かされる。
もちろん、現代の目で見て、大人の解釈として、そういった
ことを見つけ出してしまっているのだとは思うが、逆に25年
前も現在も、子供の悩みに変りがなく、それが現在はいろい
ろな形で顕在化してしまっているということも考えさせられ
てしまった。
それで映画は、そのかまちの最後の2年間と、現代の同年代
の子供たちが描かれる。そこにメッセージ性を盛り込もうと
した意図が明白な作品だ。そしてそのメッセージは、多分か
まちに興味を曳かれて来るであろうこの映画の観客には正確
に伝わると思う。
しかし映画としてみたとき、僕は、どうしてもこの映画の過
去と現在の描き方に違和感を感じてしまう。恐らく、この映
画の制作者が想定している観客には、そのようなことはどう
でもいいのだろうが、この映画を万人に見せるには、それが
弱点のようにも思える。
普通に考えれば、この映画で現代の部分は不要であろう。も
っとかまち本人に迫っても良かったはずだ。しかしそれでは
メッセージ性が弱くなってしまう。で僕は、逆に過去のシー
ンをカットしてしまっても良かったのではないかと考える。
もちろんそんなことをしたら、かまちのファンに不満を募ら
せるかも知れないが、僕は過去から始まっている物語を、思
い切って現代から始めて、そこにフラッシュバックで過去の
かまちの実像が入った方が、映画的には馴染んだものになっ
たのではないかと思った。
この映画の制作者たちは、当然その辺までも考えて、この構
成にしたのだとは思うが。
なお、本作は日本ヘラルドの製作だが、今回は宣伝会社の関
係で試写を見られたものだ。
実は、僕宛のヘラルドの試写状を昨年末で切られたらしく、
“The Lord of the Rings: The Return of the King”も、
“The Texas Chainsaw Massacre”も、試写を見せて貰えな
かった。
ということで、今後このページでは、今回のようなケースを
除いて、ヘラルド作品は紹介できませんのでご了承下さい。
まあ、そういう会社は他にもいろいろあるが、肝心の時に急
に切られるのは、こちらも対応に困ってしまうところだ。

『パピヨンの贈りもの』“Le Papillon”
蝶だけを愛する孤独な老人と、家族の愛に飢えた少女の交流
を描いた物語。
少女の年齢は8歳。シングルマザーの母親と共に、老人の住
んでいるアパートの階上の部屋に引っ越してくる。その少女
は施設での暮らしが辛かったと語るが、臨時雇いの看護師と
して働く母親は、小学校の下校時の迎えにも来られず、休み
も思うように取れない。
そんな少女と老人が、何となく親しくなって行く。そしてあ
る日、老人は幻の夜行性の蝶の情報を掴み自家用車でその捕
獲に向かうのだったが、その車に少女が潜んでいた。
子供の扱いが解からず、同行者も煩わしい老人は、最初に少
女を警察につれて行く。しかし少女は、言葉巧みに老人を変
心させ、挙げ句の果てに、蝶捜しの山歩きにまで同行するこ
とになるが…。
この少女が、こましゃくれていると言うか、機転が利くと言
うか、見事なキャラクターになっている。そして、この役を
演じているクレール・バニッシュは、1994年生まれだそうだ
から、実際に撮影当時8歳だった訳だが、これがまた抜群に
巧い。しかもこれが、嫌みにならないのだから、見事な演技
力と言えるだろう。
何しろ彼女は、この作品の前に、『千と千尋』や『サイン』
のフランス版の吹き替えの声優もしていたと言うのだから、

[5]続きを読む

02月14日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る