ID:47635
On the Production
by 井口健二
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■幸せになるための・、エル・アラメイン、ニューオーリンズ・トライアル、25時、みんなのうた、グッバイレーニン、ニュータウン物語
アメリカの裁判での陪審制度を非常に判りやすく映画いた作
品と言える。これを見て、陪審コンサルタントの役割や、現
実にここまでやるのかと思うような実体が理解できた。しか
も謎解きが見事に絡む辺りはさすがという感じだった。  
発端は2年前、証券会社をくびになった男がセミオートマテ
ィックの銃を乱射して11人を射殺、自分も自殺する。この事
件で夫を喪った女性が、その銃器の製造会社に対して損害賠
償を請求する裁判を起こす。              
陪審法廷となったこの裁判で、絶対に負けられない銃器会社
は、名うての陪審コンサルタントを雇い、無罪の陪審評決を
得られるように画策を始める。そして陪審員の選出では、問
題のありそうな人物を排除して行くのだが、一人の謎の男が
選出されてしまう。                  
そして裁判が始まった日、双方の弁護士の手元に「陪審員売
ります」と書かれたメモが届けられる。そして謎の男は、陪
審員を心理的に操り始める。              
この謎の男をジョン・キューザック、原告側の弁護士をダス
ティン・ホフマン、被告側の陪審コンサルタントをジーン・
ハックマン、そして連絡係となる謎の女をレイチェル・ワイ
ズという布陣で描くのだから申し分ない。        
裁判ものの面白さと謎解きのスリルを存分に楽しめた。  
なお原作はタバコ訴訟だったが、映画化では銃器訴訟に変え
られている。『ボウリング・フォー・コロンバイン』のオス
カー受賞などでタイムリーな変更にも見えるが、製作開始ま
でにかかった期間を考えると、ハリウッドでのタバコ産業の
ロビー活動もちらつくところだ。            
                           
『25時』“25th Hour”                
デイヴィッド・ベニオフが2001年に発表した小説を、原作者
自ら脚色、『ドゥ・ザ・ライト・シング』のスパイク・リー
監督、『レッド・ドラゴン』のエドワード・ノートンの主演
で映画化したドラマ。                 
主人公は麻薬取り引きで逮捕され、7年の刑となった男。し
かし若い白人の男が刑務所に入れられたら、7年の間にいろ
いろな男たちに弄ばれ、精神はずたずたにされる。それを避
けるには、逃げるか自殺するか。            
そんな男の最後の25時間が描かれる。          
男は自分の罪を判っている。しかし男には収監までにやって
おかなければならないことがある。その一つは、情報を警察
に売ったのが自分の恋人であるかどうか確かめること。そし
てもう一つは、瀕死の状態から助けた愛犬を預かってもらえ
る相手を探すこと。                  
そして男は、幼なじみで学校の先生をしている男と証券ブロ
ーカーで成功している男に、最後のパーティに来てくれるよ
うに頼む。そのパーティの会場となるクラブは、麻薬の元締
めが経営する店でもあった。              
この映画には、グラウンドゼロも登場するし、そこから空に
向けて発射されるサーチライトの映像もある。そんな現代の
ニューヨークのいろいろの姿が写される。2001年以降の映画
もいろいろ見たが、ここまではっきりとグラウンドゼロを見
せたのは初めてだろう。                
ノートンは、前半で感情を爆発させるシーン(映像表現が巧
い)を除いては、淡々と演じ切る。その演じ方が、後半のク
ライマックスに見事に繋がる。その他にも仕掛けはいろいろ
あって、さすが鬼才リー監督の作品と思わせた。     
なお、映画では画面のオフから聞こえる犬の吠え声がキーと
なるが、この吠え声をバウリンガルで確認したい気分にもな
った。                        
                           
『みんなのうた』“A Mighty Wind”           

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12月16日(火)
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