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On the Production
by 井口健二
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■第16回東京国際映画祭(後半)
たということだろう。                 
物語で、主人公の一家は結局没落して行くことになるが、映
画は特にそれを描こうとしている訳ではない。主人公の家の
隣が映画館だったということで、当時映画のシーンが挿入さ
れ、ハリウッドから移り住んだという女性などが彩りを添え
る。                         
『影なき恐怖』『カサブランカ』『ヴァイキング』などの映
像は年配の映画ファンには懐かしいだろうし、それらの名台
詞が物語のキーに使われたりもしている。その辺を楽しめれ
ばいいという作品。                  
なお、添えられた英語題名が“Dreaming of Julia”となっ
ているが、『影なき恐怖』の原題は“Julie”、どうした訳
だろう。                       
                           
<特別上映作品>                   
『ミシェル・ヴァイヨン』“Michel Vaillant”      
45年以上の歴史を誇るフランスの人気コミックスの映画化。
2002年のル・マン24時間レースに2台の車を正式エントリー
し、実際のレース中の撮影を敢行したという作品。脚本と製
作をリュック・ベッソンが手掛けており、さすが現代フラン
ス映画の牽引車の力業という感じの作品だ。       
物語は、ヴァイヨンチームの新型エンジンが完成し、ル・マ
ンに参加を決めるところから始まる。しかしミシェルの母親
は、大事故の悪夢に悩まされていた。そしてそのレースに、
宿敵リーダーチームの5年振りの復帰も発表される。母親の
悪夢は正にそのチームとの争いで起きるものだった。        
映画はその悪夢のシーンから始まるが、実際のレース場を使
ってのデッドヒートのシーンは迫力だったし、オンボード・
カメラを駆使した事故の模様も見事だった。                 
それにしても、物語の中でのリーダーチームの妨害工作が、
犯罪すれすれというより、まるで犯罪行為ばかりで、その姑
息さといったら、アニメのブラック魔王並みなのだから笑っ
てしまう。さすがコミックスの映画化という感じがした。 
結末もそんな感じで、結局、その辺を許せるかどうかが評価
の分れ目になりそうだが、僕は許していいと思っている。 
なお、映画の前半では山岳ラリーの様子が描かれるが、これ
はTaxiシリーズで経験を積んでいる感じで見事だった。
                           
『ハードラックヒーロー』(日本映画)         
今年のベルリン映画祭に出品された『幸福の鐘』で、アジア
最優秀作品賞を獲得した監督SABUがジャニーズ系アイド
ルのV6を主演にして作った作品。           
元々はジャニーズ側から企画を持ち込んだようで、脚本も手
掛ける監督としては6人全員を主人公にするという、一種の
挑戦を試みた作品のようだ。しかも、V6を使える撮影期間
は3日間だったようで、それもまた挑戦だったという訳だ。
それにしてもSABU程の名のある監督が、よくこのような
企画に乗ったものだと思うが、結局、上記のような挑戦をし
てみたかったというところだろうか。そしてその挑戦には、
それなりの成果があったという感じだ。         
物語は、キックボクシングを使った賭博場に居合わせた2人
ずつ3組6人のメムバーが、それぞれの事情で逃走しなけれ
ばならなくなり、町中を疾駆および疾走するというもの。ほ
とんどのシーンがパニック状態という設定は、細い演技の必
要を無くす配慮だろう。                
とはいえ、V6の面々がそこそこの演技力の持ち主であるこ
とは、途中森田、三宅の組がチンピラに絡まれるシーンで、
チンピラ役の連中の演技との差ではっきりする。さすがアイ
ドルといっても侮れないというところだ。        
内容は、70数分で3つの物語を完結させる訳だから、深みは

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11月09日(日)
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