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On the Production
by 井口健二
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■第16回東京国際映画祭(前半)
謎解きや最後の詰めの部分も納得できる感じで、最近好調の
フランス映画らしい作品。日本の配給は決まっていないよう
だが、このまま消えるのは惜しい感じがした。
なお、刑事役をジェラールの息子のギョーム・ドパルデュー
が演じている。また、海洋汚染のニュースフィルムには、数
年前の日本海沿岸のものも使われていた。
『暖〜ヌアン』“暖”
『山の郵便配達』が日本でも高い評価となったフォ・ジェン
チー監督の新作。第3作までというコンペティションの規定
が今年から撤廃されたことで出品された監督の第4作。
「白狗秋千架」という短編小説の映画化ということだが、と
ても短編で描き切れる内容ではなく、映画のための脚色が相
当に入っていると思われる。そしてその映画としての素晴ら
しさが随所に見られる作品だった。
歌と踊りが上手く村の花だった少女と、勉強ができてやがて
は都会の大学に進む若者。相思相愛で、周囲も認める中だっ
た二人が、10年の歳月で全く異なる人生を歩んでしまう。そ
れはちょっとした偶然の悪戯。
田園の広がる中国の農村を舞台に、ちょっとした行き違いか
ら二人の幸せを掴み損ねた男女の青春時代と現在が見事に交
錯して描かれる。貧しいが、今が幸せだと思わざるを得ない
人生。決して悲劇ではないのだけれど、最後は本当に泣けて
しまった。
主人公の二人は中国人の俳優だが、キーとなる役で香川照之
が出演。はまり役と言えるような見事な演技を見せている。
『ウィニング・チケット』“Telitalalát”
1956年、共産主義政権下のハンガリーで起きた実話にインス
パイアされたという作品。
共産主義の名の下に苦しい生活を強いられている民衆たち。
ところがある日、主人公はトトカルチョで100年分の給料を
上回る賞金を獲得する。しかし、その賞金を現金で鞄に詰め
て持ち帰ったことから、疑心暗鬼に陥り、やがて生活が破綻
していってしまう。
実話の当選者は、その後行方不明になったということだが、
映画の主人公も、ソ連軍の進駐や一時的な反政府活動の決起
などに翻弄される。映画らしい偶然もいろいろあって、実話
とは思えない部分も多いが、当時の悲惨な生活を垣間見せて
いるという感じもする。
昔の東欧圏の国で、共産主義を批判することは、今もまだ危
険が伴うという話を聞いたこともあるが、この映画では、偶
然を重ねておとぎ話的に描くことで、その批判をかわす意図
があるのかも知れない。
現代の日本を基準にして観ると、馬鹿馬鹿しく感じてしまう
かも知れないが、これが現実だった世界もあったということ
だ。
『ゴッド・イズ・ブラジリアン』“Deus é Brasileiro”
ブラジルのとある川岸に住む若者のもとに、神様がやってく
る。神様はちょっと休暇を取る為に、その間の代行となる聖
者を求めてやってきたのだ。ところが、その聖者になるはず
の男はすでに移り住んだ後だった。そこで若者と神様の、男
を探す旅が始まるのだが…。
今の時期にこのテーマだと、どうしても『ブルース・オール
マイティ』が思い浮かんでしまうが、VFXで奇跡を起こし
まくるハリウッド映画とは違い、こちらの神様はいたって素
朴だ。しかも、胡散くさい宗教家にころりと騙されたりもし
てしまう。
でも最後まで出突っ張りの神様は、その間にろいろなことを
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11月05日(水)
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