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On the Production
by 井口健二
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■シービスケット、ニモ、ガーデン、すべては愛のために、ケイティ、戀之風景、気まぐれな唇、アンダーワールド、マトリックス
しかし子育ては大変で、反発した息子はあっと言う間にダイ
ヴァーにさらわれてしまう。そこから、子供を救うための父
親と、父親の許に帰ろうとする息子の大冒険が始まる。
それにしても、話の作り方が上手い。人間と共通する悩みや
問題と、海の中特有のお話とを見事に交錯させて、ディズニ
ーのアニメーションにしては長い1時間41分のドラマを見事
に作り上げている。
特に、現実にはありえない異種の生物間のコミュニケーショ
ンや協調が嫌みなく描かれている点もそれなりに買いたいと
ころだ。また、そこに加わらない連中を描くことも、アメリ
カというところだろう。
僕自身、息子を持つ父親として、主人公の気持ちは非常によ
く解かった。ただ、日本の映画人口のかなりの部分を占める
女性観客がどう見てくれるかが勝負になりそうだ。
『ガーデン』“Zahrada”
スロヴァキアの映画作家マルティン・シュリークによる95年
の作品。同監督の作品3本が連続公開される内の1本で、僕
は時間の関係で1本の試写しか見られなかったが、他の2本
も見たくなる作風だった。
本篇の主人公は30歳の独身男。一応、教師の職はあるが、仕
立て屋を営む父親との2人暮らしで、父親の客の年上の女性
の不倫相手になるなど、怠惰な生活を送っていた。
しかしついに父親の逆鱗に触れ、家を追い出されて、祖父が
建て父親が昔住んでいた田園の廃屋へとやってくる。
そしてそこを何とか住める場所にしようとする内、鏡文字で
書かれた日記を発見したり、不思議な雰囲気の少女や、いろ
いろな謎の人物が登場して、主人公を混乱させて行く。
最終的には主人公の精神的浄化がなされる物語で、その間の
いろいろな物語が、いくつもの章に分けられ、スケッチのよ
うに描かれてゆく。
まあ、物語自体それほど深刻な訳ではないし、気楽に見てい
られる。そして最後にちょっと仕掛けがあって、何となく微
笑ましい感じで見終れる。
メルヘンと言えばメルヘンだろうし、何とも不思議なムード
の作品だった。
『すべては愛のために』“Beyond Borders”
緒方貞子女史の活動で、日本でも名前を知られるようになっ
た国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)。その親善大使
も務めるアンジェリーナ・ジョリーが、ある意味、その活動
のPRの意図も込めて作り上げたと思われるドラマ作品。
物語は、1984年エチオピアの大飢饉に始まり、1990年カンボ
ジア紛争、1994年チェチェン紛争を背景に、その危険な現地
で活動するNGOの医師と、それを支援するイギリス人女性
を中心に描かれる。
ほとんどが寄付によって賄われているUNHCRの活動の困
難さが克明に描写されるが、その一方でCIAの暗躍なども
描かれ、単に綺麗事だけに終らせていないところはさすがと
言うところだ。
また、医師と女性の道ならぬ恋を描いてドラマを盛り上げる
が、それも悲惨な現状を描く上での方策といった感じで、全
ての目が厳しい現実に向けられている点は、いわゆるハリウ
ッド映画と違うところだろう。
大時代的な邦題に、大掛かりなメロドラマを想像したが、全
く予想に反して思わず居住まいを正すような作品だった。で
も日本では、ぜひともメロドラマの線で売って、観客に現実
を突きつける効果を上げてもらいたいものだ。
『ケイティ』“Abandon”
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11月02日(日)
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