ID:47635
On the Production
by 井口健二
[460312hit]
■ブルドッグ、ヴァンダの部屋、ストーリー・ビギンズ・アット・ジ・エンド、悪い男、アフガン・零年、ジョゼと虎と魚たち、キル・ビル
12月13日から開催されるNHKアジア・フィルム・フェステ
ィバルで上映される新作の1本。このフェスティバルは、N
HK出資でアジア各国の映画作家と共同製作するプロジェク
トの一環として2年に1度開催され、今回が5回目。僕は2
年前の前回から試写を見せてもらえるようになった。
本作はインドのムラリ・ナイール監督の新作で、同監督は過
去にカンヌ映画祭の新人監督賞も受賞、今年のカンヌでは、
その部門の審査員も勤めたそうだ。
物語の主人公は、落ちぶれかけた地主の末裔。一応農地は守
っており、裕福ではないが、若い妻と幼い一人息子とまずま
ずの暮らしはしている。そんな主人公の口元に、突然、黒い
いぼが生じる。
そのいぼを、最初は幸運の印などと言っているが、日々大き
くなるいぼに妻も懸念を隠せない。しかし主人公は医者に行
くことを拒み、薬草で直すと主張する。ところが、いぼはど
んどん大きくなり・・・。
このいぼに何か寓意でもあるのかとも思ったが、別にそうい
うこともないらしい。しかも90分の映画の後半30分ほどは、
このいぼのせいで話が突然シュールに展開し始め、ちょっと
信じられない結末になる。
資料にインフォメーションはなかったが、これはやはり民話
か何か下敷きがあるのではないかという印象だ。それとも、
そういう展開を真似て作られた作品ということなのか。いず
れにしてもこの後半の展開には唖然とした。
単に監督の構成力に難があるということも考えられるが、そ
れにしては上記の経歴は立派すぎる。なんとも狐に摘まれた
ような感じ。
ただし映画は、見終ってあっけらかんとした結末などのせい
か、悪い気分にはならなかった。それだけの手腕はあると言
うことになるが、それにしてもこの展開は謎だ。
『悪い男』(韓国映画)
映画祭常連監督キム・ギドクの02年作品。本作はベルリン映
画祭のコンペティションに選出されている。
ヤクザの男が女子大生に目を止め接近するが、汚らわしいも
のを見るような目で避けられてしまう。そんな女を男は策略
で陥れ、借金の形として風俗街に売り飛ばす。環境の激変に
とまどい悲嘆する女。そんな姿を男はマジックミラー越しに
見続ける。
今時の女がこんな手口に引っ掛かるものかという部分もある
が、全体が男女の関係を描いたファンタシーという感じが強
く、そういうこととして見るべきものだろう。
結局、男の愛の本質は映画の後半になって提示されるが、そ
の心情は理解できないこともない。男女の愛には、いろいろ
な形があると思うが、その一つの姿が提示されているという
ところで、そのテーマは解かりやすい。
韓国製のヤクザ映画も何本か見ているが、初めてその心情を
理解できる作品だった。主人公の男は、一面ではタイトルと
は裏腹の男なのだ。それに登場する他のヤクザたちも、それ
なりに道理を踏まえた男たちであることも、納得できるもの
だった。
なお、プレスに<韓国の北野武>というコピーを見たが、ま
ったく失礼な言い草だ。ストーリーテリングの上手さでは、
何かと無意味な暴力シーンに逃げるたけしなど足下にも及ば
ない。年齢的にはたけしより若いが、人間に対する洞察力も
数段上だ。
海外の作品を扱うのに、こういう他国人を見下すような言い
方は止めるべきだろう。
『アフガン・零年』“Osama”
[5]続きを読む
10月16日(木)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ
[4]エンピツに戻る