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On the Production
by 井口健二
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■ノックアラウンド・ガイズ、タイタニックの秘密、アララトの聖母、KEN PARK、閉ざされた森、バリスティック
ので、出来たら見てみたいものだ。
『アララトの聖母』“Ararat”
アルメニアからの亡命者の子として生まれたアトム・エゴヤ
ン監督が、失われた祖国の歴史を背景に描いた作品。
アララト山というと旧約聖書のノアの箱船が辿り着いた場所
として記憶されるが、その山麓で1915年トルコ兵による100
万人規模の人民大量虐殺が行われた。その出来事は、当時現
地で医療活動をしていたアメリカ人宣教師の手で記録された
が、現トルコ政府はその事実を否定しているというものだ。
この作品は、その出来事の記録を残すことを第1目的として
作られている。しかしエゴヤンはそれを声高に言い張るよう
なことはしない。その出来事を映画化しようとする監督を登
場させ、さらに虐殺で母親を失った後にアメリカに亡命した
画家の作品をモティーフにして、そこに現代の親と子の関係
を綴り込む。
再現部分を劇中劇とすることで、あえて残虐な描写を試みた
面はあるのだろうが、同時に国際的に微妙な問題を緩和する
目的もあったのかも知れない。確かにカンヌでは正式出品に
留まり、アルメニア亡命者の多いカナダのジニー賞を5部門
受賞というのも頷ける。
他にも、息子の同性愛に悩む父親なども登場させ、物語を複
雑にしながらも、その主となるテーマを外さない描き方は、
本当に見事としか言いようがない。
それにしても、歴史上の大虐殺事件とそれを否定する現政府
という図式は、どこにでも存在するようだ。真実がどちらに
あるかを知ることは容易ではないが。
『KEN PARK』“Ken Park”
1995年に映画『KIDS/キッズ』でセンセーションを巻き
起こした監督ラリー・クラークと脚本家ハーモニー・コリン
が再び手を組んだ新作。今回は共同監督に映画カメラマンの
エド・ラックマンも参加している。
物語の中心は、4人の少年と1人の少女。いろいろな家庭環
境で暮らす彼らの内、1人の少年は自殺し、1人の少年は同
居していた祖父母を刺殺し、後の2人の少年と少女は乱交に
耽り続ける。
前作の『KIDS/キッズ』は見たかどうか記憶にないが、
当時の青少年の実態を描いて世間に衝撃を与えたものだ。今
回の作品も、そのような衝撃を覚悟したのだが、正直に言っ
て、最近の中学生の犯罪を目の当りにしていると、衝撃と言
うほどではない。
それより僕は、彼らの親たちの行動の方にやりきれないもの
を感じた。実の息子に暴力を振るうことでしか対応できない
父親や、娘のボーイフレンドとの情事に耽る母親、聖書に頼
ることしか出来ない父親など、ここに描かれた親の姿の方が
衝撃だった。
実は、クラークは今年60歳、ラックマン55歳ということで、
脚本のコリンは30歳だが、監督の2人はいずれも登場する親
たちよりも、さらに上の世代と言うことだ。
そしてどちらかと言うと監督たちの世代に近い僕は、何とな
く、2人の監督は子供たちの世代の方に理解があるように感
じ、逆に親たちに「おまえら何をやってるんだ」と言ってい
るような映画に感じた。
なお、自慰シーンやセックスシーンがかなり生々しくという
か、実演で描かれるが、日本公開ではほとんどが霞みの彼方
になっている。まあこれらのシーンの修整がなかったとして
も、衝撃と言うほどではないと思うが。
『閉ざされた森』“Basic”
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07月16日(水)
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