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ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File005】世界最初の戦争映画って何?
1895年フランスのリュミエール兄弟によって現代型映画の原型ともいえる作品が公開されてから、数多くの映画が制作・公開されて来ました。当然戦争映画≠烽サの中に含まれる訳ですが、世界で最初に制作された「戦争映画って何?」と問われて直ぐに答えられる方はいらっしゃいますか?
前述の如く、古代・中世・近世の時代劇・史劇ともいわれる作品まで範疇を広げれば、特定するのは非常に難しいと言えます。勉強不足のため、初期の映画にどのようなタイトルの作品があるかわかりませんが、昔の英雄や戦いを描いた作品が無かったとは言い切れません。ただし現在のような長編ストーリーでセットや衣装等が凝った作品ではなかったことでしょう。
現在刊行されている戦争映画≠ノついて書かれた書籍資料では、ほとんどが戦後公開された戦争映画=第一次大戦以降作品がリスト形式で掲載されています。
前述の如く、第一次大戦以前の戦争を扱った作品は世間一般的には歴史ドラマ・史劇として分類されているようなので、戦争映画として世界最初の作品は第一次大戦を扱った作品の内のどれかなのでしょう。が、実際「これが世界最初の戦争映画だ」と言えるだけの資料が手元にありません(ご存知の方、ご教授下さい)
それでは各国の戦争映画の制作(公開)状況について見てみましょう。

【アメリカ】
1911年ハリウッドに本格的な映画スタジオが設立され、アメリカ映画界の繁栄が始まります。初期の映画ですから娯楽面が強調されているのは当然ですが、やはり歴史上の英雄やヒーロー、西部劇のガンマンが活躍する作品が多く制作されます。その中には戦争映画と言えるものもあるかもしれないですね。
1904年から始まった第一次大戦では、参戦が遅かったこともあり、それをテーマとした作品は少ないようで、しかもほとんどが戦後に作られているようです。
第二次大戦が始まると、政府の指導により、映画が国家の戦略に組入れられます。いわゆる「映画戦」というもので、初期の情報戦・メディア戦的もので、映像情報によって国民の意思を操作しようというものです。ジョン・フォード等の映画人が政府の後援により反日・反独の作品を多数制作します。
この状況は戦後も続き、冷戦による東西緊張状態と朝鮮戦争なども影響して、多くの戦争映画が50年代〜60年代にかけて制作されます。
ベトナム戦争以後、俗に「ベトナム戦争後遺症候群」と言われるような作品が多数制作される訳です。アメリカ人にとって「ベトナム戦争とは何だったのか」「ベトナム戦争が残したものは」という問いかけが、この時期の戦争映画の主流だったといえます。
共産主義・ソ連の崩壊とともに敵≠失ったハリウッド戦争映画は急激に衰退します。この状況はスピルバーグ監督の「SPR」の公開まで続く訳です。

【日本】
世界初の映画公開の翌年には、早くも映写機が輸入されていた日本では、1897年には国内初の映画興行が行われ、1899年には初の国産映画が制作されています。初期の日本映画界もハリウッドのそれと似た状況で、娯楽性の高い時代劇や男女のロマンスを扱った作品が多かったようです。1900年に勃発した「北清事変」(北京の55日の舞台)には撮影班が派遣され、また1904年の「日露戦争」にも撮影隊が従軍し、情報メディアとしての映画が活用され始めています。大陸への侵出と激化する戦闘により、前線での兵士の姿や戦場での美談・英雄的行為を描いた作品が多数制作されます。1939年「映画法」の制定により、国内での映画制作と公開に規制か加えられると、この傾向はますます顕著となり、太平洋戦争突入後は情報局管理の下、映画制作各社の統合が行われます。軍隊・軍人・戦争美化、鬼畜米英をテーマとした作品が軍部の後援により多数制作され、前線の報道フィルム(日本ニュース)とともに各地の映画館で上映されます。

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10月28日(日)
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