ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File076】彼らはブーツを履いたまま死んだ・・・多勢に無勢【中編Vol.2a】
それではカスター将軍とリトル・ビッグホーンの戦い≠フ実像に迫る前にアメリカにおけるインディアン受難史≠ノついて、極めて簡略化して説明させていただきます。インディアンの祖先は、氷河期の終わり頃に北極ベーリング海を渡ってシベリアから移住したと言われています。そして南北アメリカ全域に渡って独自の文明を築いて行きました(南米では御存知の通りインディオ≠ニ呼ばれています)。コロンブスによるアメリカ大陸発見(1492年)後、新大陸の豊富な富(金銀財宝・香辛料等)に魅せられたヨーロッパ人(主にスペイン人やポルトガル人)は、南北アメリカの各地に勢力を広げ、インディアンたちを殺戮し略奪を続けました(反面アメリカに馬を持ち込み、騎馬を習慣をインディアンたちに伝え18世紀には、広くインディアンの間に普及した)。スペイン・ポルトガルの没落後、世界史上に台頭して来た英国やフランスは、主に北米に植民の拠点を置き、インディアンたちと表向きは友好的な条約(割譲・購入)を結びながら、インディアンたちから有利な条件で土地を手に入れ、開拓・植民して行きました。インディアンたちは、白人との同盟締結や毛皮交易などを通じ、銃やナイフ、酒、衣服を手に入れる事になるのです。中でも馬と銃はインディアンたちの狩猟を革新的に進歩させ、結果的に食料事情を好転させ彼らの人口の増加を助長させる事となり、これによって食料や土地を巡る部族間の抗争が激化、部族毎の勢力関係に大きな変化をもたらす事になります。英国やフランスと同盟を結んた結果、インディアン同士が戦った戦争の中で、最も大きなものは1756年から1763年まで行われたフレンチ・インディアン戦争≠ナした。この戦争では、結局英国側が勝利しますが、結果として戦費の嵩んだ英国が植民地13州への増税を実施した事が、独立戦争の原因になった言われています。1776年北米東部植民地13州の独立により成立したアメリカ合衆国は、北米全体へ領土と主権を広げて行く過程で、その土地に住むインディアンたちを、彼らの意思に関係なく自国領土内に取り込んで行きました(ルイジアナ/1803仏国より購入、フロリダ/1819スペインより購入、テキサス/1845併合、オレゴン/1846英国より併合、カルフォルニア・ニューメキシコ/1846の米墨戦争を経て1848メキシコより割譲)1829年に合衆国大統領に就任したジャクソンの領土拡張政策が生み出したMAGNIFEST DESTINY=拡大の天命(西部への拡大を当然の宿命=国家的使命とする考え方)℃蜍`は、必然的にFRONTIER=白人社会と未開地域の境界線≠西へ西へと押し進め(その極みが1848年のゴールド・ラッシュ)、当然の如くそれらの地域に居住していたインディアンたちとの衝突(征服と土地奪取)を引き起こす事になります(1840年〜1860年にかけ合衆国に移民する人口は400万人を超えた。「西部に行けば金持ちになれる」「土地が貰える」と言ったキャッチ・コピーに触発された貧しい白人移民・開拓民たちは、夢(アメリカン・ドリーム)を託し続々と西部へ向かい、インディアンたちの聖地とされる土地に無断で入り金を掘り、またバッファローを殺し捲り、インディアンたちの生活基盤を破壊して行った)。合衆国政府は白人開拓民保護のために軍隊(騎兵隊)を投入、1890年代にFRONTIER≠フ終焉が訪れるまで、白人と勇猛果敢に戦った平原部インディアンの主要部族(コマンチ、シャイアン、スー、アパッチ、モヒカン等)はほぼ皆殺しにされ、嘗て北米の原野を埋め尽くす程いた野生のバッファローもまた絶滅の危機に瀕することになります。生き残ったインディアンたち(戦いを好まず早くから白人に恭順の意を示していた部族や辺境の山岳系部族、それと平原系部族の生き残った老人や女子供たち)は辺境の地に設けられた不毛で食糧供給もままならない居留地≠ノ送り込まれる事になりますが、それらの多くも貧しい食料事情や白人たちの新たに持ち込んだ新種の病原体(天然痘や小児麻痺)によって、その多くが命を落とす事になります。今まで狩猟を中心とした遊動生活を行っていたインディアンたちにとって、居留地への定住の強制は、神々や精霊、動物との共存を精神的支柱として、大自然の中で自然と一体となって生活してインディアンたちの文化に、取り返しのつかない大きなダメージを与える事となりました。1889年インディアンたち間に大いなる霊の啓示≠フ噂が広がります。これはゴースト・ダンス(霊の踊り)≠行なう事によって大いなる霊≠ェ顕れ、インディアンたちを救済し、白人が消えていなくなる審判の日がやって来て、死んでしまったバッファローとインディアンを生き返らせる・・・と言うもので、彼らは熱狂して踊り続けました。合衆国政府はこれを禁止する為に各地の居留地に軍隊を投入、インディアンたちを弾圧、多くの犠牲者を出し、以後インディアンたちの生活は大きく制限されて行きました。1890年合衆国政府はこの国のフロンティアは消滅した≠ニ国勢調査報告の中で宣言。インディアンたちは少数先住民≠ノ区別され現在に至る事となります。白人たちによって、神々の恵みに溢れた広大な土地を奪われ、狭い保留地に閉じ込められ、個人別に痩せた土地を割り当てられ、農民となることを強制され、部族共同体の生活形態を壊され、自然や神や精霊たちとの生活をズタズタにされ、子供たちには白人文明社会との同化政策によって親元を遠く離れた都会での寮生活を強制され、その精神・文化自体が白人化させられて行きます。このインディアン文化の終焉こそが、真に白人たちが望んだインディアンとの戦いの勝利≠セったのです。

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02月25日(火)
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