ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File070】あゝ邦画戦争映画は燃えているか・・・阪妻$カ誕百周年記念『殿様と御家老と足軽』
B戦争後期に製作される戦意高揚国策映画≠ニは異なり、まだ戦局に余裕がある頃・・・英米を相手にする前・・・で、大陸戦線を舞台として製作された作品の為、ひたすら敵の残虐性を強調するとか、味方兵士の勇猛果敢な行為を強調・礼賛するとか一億玉砕を煽るとか言った演出法はなく、後方の補給路が抗日ゲリラの襲撃に脅かされ物資が不足している様(師団長の食事ですら潤沢でなかったり、兵士たちの間で煙草が不足し代用品で我慢していたり、食事が乾パンだけだったり)とか、山間部の険しい道を、部隊がひたすら苦労しながら前進していく様子とかを、彼方から淡々と眺めている様な映像で戦場のリアル観を描き出し前線の兵隊さんたちはこんなに苦労しているのですよ%Iに描いている点が注目されます。まあ映画の演出的には、スケールが大きいだけで基目が荒く人間=兵士個人個人≠ェ描かれていないように見えますが、実際戦場なんてこんなもので、何処彼処でひっきりなしに戦闘が行われている訳ではないですから、反ってリアル観が増幅されていると思うんですけど・・・これも当時の一般観客にはどう映ってたんでしょうか?
C当時の日本陸軍の補給機構(機械化されておらず人力・馬匹中心/後方補給線の安全確保の不備)や通信機器の不備(師団司令部でさえ大型の無線機が一基しかなく、それが砲撃で破壊されると呆気なく通信手段が無くなる)の実情が、何気に克明に描かれており日本軍内部のロジスティックやコミュニケーションの軽視が伝わって来ます。まあ当時の監督始めスタッフには、そんな事を強調する意図はなかったでしょうけど・・・。
D流石に陸軍=関東軍全面協力だけあって、銃砲撃・爆発シーンは半端じゃなく大迫力です。あの爆発はどう観ても本物▼・・あれじゃ怪我人♂コ手すりゃ死人≠ェ出てるかも・・・おいおいマジかよ!
E支援要請の為、杉参謀少佐以下数名が騎馬で中国軍の包囲を突破するシーンや、最後に戦車(軽装甲車)隊が救援に駆けつけるシーンは、どう観ても西部劇▼・・特に戦車(軽装甲車)隊の救援に駆けつけるタイミングときたら、先住民に襲撃された開拓民の幌馬車隊の救援に駆けつける騎兵隊の如きタイミングの良さです。当時の一般観客も、この場面で拍手喝采していたのでしょうか・・・。でも実際の兵士の軍装や武器、九四式軽装甲車等の実車がたっぷり堪能できるので日本軍軍装マニアや武器・AFVマニアにとっては堪らない作品ではあります。
F時代劇の大御所である阪妻主演で、かつ当時の有名どころの俳優総出演だからではないでしょうが全体の作りがどこか時代劇%Iです。司令部でのシーンや乗馬姿の阪妻はモロお殿様≠ナ、合戦かはたまた鷹狩りにでも出かけるような雰囲気。で参謀たちが御家老≠ネ訳で、一般兵士は足軽≠チてトコですか・・・。師団長の進出と共に、前線に指揮所が設営されますが、これがまたお殿様の御休息所の陣幕でも張るような雰囲気。また師団長の健康を気遣い、夕食用に卵を手に入れてきた従兵に対し、師団長が労いの言葉≠かけるシーンがあるのですが、従兵はその言葉を聞いてこの人の為なら死ねる・・・%I感動を味わっております。まあ前線における指揮官たちや一般兵士たち、さらには従軍記者たちの姿を多面的に描こうという演出の結果なのでしょう。反面、敵である中国兵は、遥か遠方でちょこまか動き回ってドンパチ撃ってくるだけで小憎らしき敵≠チて感じ・・・そう言えば中国の一般大衆は殆んど描かれてません。まあそんな事は一般観客にはどうでもいい事であって、要はちょんまげ≠カゃない阪妻が観れた・・・って事なんじゃないでしょうか!
【戦意高揚国策戦争映画の限界】
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12月10日(火)
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