ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File049】記念連続ドラマ第五夜「プライベート・ライアンとラメルの橋」後編
メリッシュとアパム伍長の一隊は、町の東側に聳える城館の麓に辿り着いた。城館は空堀で町と遮られていたが、跳ね橋が下ろされていて中に入れるようになっていた。メリッシュが城館の中に車両を進めようとした、その時。城館の中から一人の人物が姿を現した・・・英軍将校だ・・・空挺隊員、なんで・・・。傘を持ってる・・・右手を上げ、メリッシュらの車両を停止させた。「止まれ・・・何処の隊だ・・・」メリッシュは慌てて操縦席から降りると、英軍将校の前で直立し、そして敬礼した「米軍第2レンジャー大隊のメリッシュ二等兵です・・・」「宜しい二等兵、休めッ!私は英軍第一空挺師団のフロスト中佐。この城館は我々が接収した。君等はもう来る必要はない・・・引き返せ!」いかにも将校然とした命令口調で言った「し、しかし我々にも命令が・・・」フロスト中佐が左手を上げた瞬間、城館の彼方此方から現れた英軍空挺隊員が、一斉にメリッシュたちに銃口を向けた・・・「上官の命令は聞かんといかん、なぁ・・・二等兵君!」咄嗟のことでメリッシュは体が硬直して動けない・・・アパム伍長は、ハーフトラック上の50口径機銃ターレットに飛び込もうとしたが、英軍兵士の銃口の方が素早く向けられた為、動く事が出来なかった・・・その時、ハーフトラックの陰からガフィ軍曹が姿を現わした・・・「おやおや、何の騒ぎです。あれ?何処っかでお会いしましたねぇ・・・えっと何処でしたっけ?」「わ、私は記憶にないぞ・・・」白々しく言うフロスト中佐。「ほ〜ほう、こりゃ随分出世したもんですね中佐殿・・・こないだヌーヴィルの手前の橋≠ナお会いした時にゃ、確か中尉だったが、今じゃ三階級特進ですかい・・・えぇ?」突然フロスト中佐の表情が強張ったかと思うと「撃てェ〜ッ」と叫んで建物の陰に飛び込んだ・・・英軍兵士?たちの銃撃が始まる・・・メリッシュが倒れた・・・ガフィ軍曹はハーフトラックの50口径ターレットの射手席に飛び込むと、思いっきり引き金を引いた・・・ターレットがゆっくり旋回し四門の50口径機銃が火を噴き、次々に英軍兵士?が掃射され・・・薬莢が雨の如く排莢される・・・そして静寂・・・アパム伍長はハーフトラックから飛び降りると、倒れたメリッシュに駆け寄った・・・「しっかりしろメリッシュ・・・メリッシュ〜ッ」アパム伍長は、メリッシュの体を抱き起こし大きく揺り動かしたが、反応が無い。ターレットからガフィ軍曹が身を乗り出しタバコに火を点けた・・・。弾痕だらけの跳ね橋の袂でフロスト中佐・・・だった遺体が転がっていた・・・首が無い・・・そして英軍の軍服の下からドイツ軍降下猟兵のツナギの作業衣がのぞいていた・・・。メリッシュを抱いたまま硬直しているアパム伍長・・・「チョ、ちょっと苦しいんだけど・・・」アパム伍長の耳元で声がした「メ、メリッシュ、大丈夫なのか〜」「俺って、生まれつきツイてる!・・・んだぜ・・・アパム」引きつった顔がかすかに微笑む・・・そして懐から取り出したのは一本のナイフ・・・束の部分のヒトラーユーゲントの紋章に一発の弾丸がめり込んでいた・・・「まったく驚かせやがって・・・」と言いながらもアパム伍長の顔には安堵の表情が浮かんでいた。そしてトミーガンを構えたガフィ軍曹を先頭にメリッシュ、アパム伍長らの一行は城館の奥へと入っていく。彼方此方に転がる英軍空挺隊員の格好をした遺体・・・どの遺体も、英軍軍服の上衣の下からは独軍降下猟兵の軍服がはみ出ていた。城館の中庭を慎重に進む一行・・・の前に、突然、窓を突き破って火達磨の人間が転げ出て来た・・・英軍の軍服だ。メリッシュが叫ぶ「撃つな〜どうせ焼け死ぬ・・・ッ」その直後、建物の中から一人の男・・・ちょっと小肥りで丸顔・丸眼鏡の中年男・・・無表情だ・・・が古い水平二連の散弾銃を担ぎ、火炎放射器のノズルを手に現れ・・・ガフィ軍曹やメリッシュたちの横をすれ違いながら歩いて行く。そして空堀に火炎放射器を投げ捨てると、そのまま城館の外へと行ってしまった。一体なんだったんだ・・・一行は首を傾げた。だが、そのまま城館の裏庭まで前進したガフィ軍曹とメリッシュ、それにアパム伍長は、その場に立ち竦んだ・・・合掌!町の西側からは、依然として激しい銃声が聞こえていた・・・。


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07月18日(木)
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