ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File042】インディアナジョーンズ・・・じゃなくてインディアナポリス、危険な道・・・軍艦洋画編Vol.2
凄いタイトルで最初にビデオソフトのジャケット見た時は、ヒーローとか特殊工作員が大活躍するお手軽アクションおバカ作品かと思ってました・・・爆。オイオイ待てよ「インディアナポリス」なんて戦艦≠ったけ?原題は「MISSION OF THE SHARK」でテレビ映画です。もちろん日本国内未公開で、ビデオのみ発売されています。で、物語は太平洋戦争の各出来事の中でも特記事項として上げる事が出来る米海軍重巡洋艦インディアナポリス≠フ撃沈(1945.7.29)事件を描いた話です。このインディアナポリス″撃沈事件が特記されるのは、日本の敗戦を決定尽けた原子爆弾≠サの一発目1945年8月6日広島に投下されたリトルボーイ@pのウランをテニアン島まで運んだのが、このインディアナポリス″であり、もしも撃沈されたのがテニアン島からの復路ではなく往路であった場合、その後の対日戦略が大きく変わっていた・・・日本本土侵攻(オリンピック作戦)が実施されていた・・・かも、とは架空戦記・・・ifなお話ですが、まあ、そんなんで重要な訳です(オイオイ)インディアナポリス″を撃沈したのは日本海軍伊58潜水艦(艦長:橋本以行少佐、当時回天を搭載し特攻作戦従事中だったが、この時は通常の魚雷攻撃)なのですが、この撃沈に関わる物語は、撃沈そのものよりもその後≠ェ重要なのであります。すなわち乗員1200名中、無事救助されたのは320名余。実に900名近くの乗員の命が失われたのですが、その大半が伊58潜の雷撃が直接の原因ではなく救助の遅れ≠ェ原因であった事にあります。終戦の僅か2週間程前。もはや戦勝気分が蔓延しつつある米海軍の気の緩み≠ェ生んだ悲劇なのでしょうか・・・。当時米海軍では戦訓(オペレーションリサーチ)から、艦船の航行・運行の管理体制を整備し、特に単独行動する艦船の戦闘・海難による損害に対処するシステムが完成されていました。出航と入港がキチンと管理されてた訳です。しかし戦争末期の時点で、日本軍の特攻攻撃、特に少数ながら人間魚雷回天≠搭載し行動する潜水艦への対策(過度の恐怖感による・・・)として前記艦船航行管理システムが一部運用変更されていたのです。すなわち出航・入港報告の防諜上に理由による中止です。これによってインディアナポリス″の入港報告が無く、撃沈されていたにも関わらず、発見が4日後(一説に5日後)となってしまいました。まあ被雷時に無線室がヤラレ、救難信号が打てなかった事も大きな理由の一つではありますが・・・。映画では、被雷時から漂流・・・救助と、その後の軍法会議までが描かれます。まあ軍艦の喪失については、それが戦闘・事故に関わらず艦長以下乗員についての査問会や軍法会議が行われ責任の所在が追及される訳ですが、このインディアナポリス″の事件は終戦直前に発生し、救助の遅れから多くの人命が失われた為、マスコミ・世論の非難も大きく、海軍としては軍法会議のスケープゴートとして艦長チャールズ・マクヴェイV世大佐を「敵潜の攻撃が予測されたにも関わらずジグザグ″q行を行わなかった」という理由により有罪とし軍籍を剥奪(後に名誉回復し復職するが退役後マクヴェイ大佐は自殺)します。さてこの映画のハイライトは何と言っても被雷・沈没後の生存者の漂流シーン。実は多くの犠牲者が出た大きな原因は、原題にもあるようにSHARK=鮫≠ナあります。アニマルパニック映画の大ヒット作「ジョーズ」に登場する漁師(演じるはロバート・ショー)が、このインディアナポリス″の生き残りって設定なの覚えてますか・・・。あと「虎鮫作戦(1956/主演ヴィクター・マチュア)」って作品では、漂流中の鮫被害対策の為鮫≠フ嫌う薬品を開発する物語が描かれています。この「シーフォース」では洋上を漂流する生存者(単独あるいは幾つかのグループに分かれ洋上を延々と漂流しています)が次々と鮫≠ノ教われ命を落としていく様子が描かれています。一見何事も無いかのように漂流している水兵の下半身が無かったり(げぇ〜グロ・・・い、海軍は好きだが海嫌いのATFにはトラウマなシーンです・・・鬱)鮫≠ノ襲われパニックになり、仲間を救命筏から突き落としたり、恐怖で発狂したり・・・上空を気付かず飛び去る友軍機・・・など海難の悲劇が描かれておりテレビ映画の割には描き込まれた演出です。やっと通りかかった飛行艇(グラマンSA16アルバトロス)の機長が、この悲劇に偶然気付きます。そして燃料切れ覚悟で救助に当たり、最後は着水し、生存者を機内だけでなく機体・翼上まで所狭しと救い上げるシーンは印象的です。軍法会議のシーンでは検察(?)側証人として、元伊58潜艦長(演じるは「パール・○ーバー」で源田参謀を演じた日系俳優ケリー=ヒロユキ・タガワ。彼って欧米人が印象している日本人そのものっていうイメージだよなぁ)が喚問されジグザグ″q行の是非について証言させられます(コレは事実)そう言えば日本潜水艦内のシーン、数ある日本軍が登場する作品の中では比較的シッカリした日本語喋っている(やっぱ変かなぁ〜)と思えるのですが、ビデオには字幕が出ます・・・爆。それと先任将校?が米軍式の艦内レシーバーとマイクを何時も身に付けているのと、ヤケに士官の肩章が目立ってるのはチョットなぁ〜≠ネ設定ですが。兎にも角にも洋画の邦題のつけ方の酷い例のヒトツではあります・・・特に一般公開されず、直接ビデオ化されたTV映画なんかには多いですな・・・WOWOWで話題になった南北戦争時の世界初の潜水艦攻撃を描いた「THE HUNLEY」なんて良い映画なんですが、邦題は「進め!人力潜水艦ハンレー号」ですからねぇ〜。これじゃまるで○ィズニー制作のファンタジーだよ・・・悲し。この「シーフォース」のビデオはレンタル店でも良く見かける事が出来ますし、中古店にも結構出回ってますので、是非一度ご覧下さい(でも人気ないんだよねぇ〜)その他には石原裕次郎主演の「人間魚雷出撃す(1956)」には、この事件をモデルにしたエピソードが挿入されています。さらにインディアナポリス″事件の悲劇について書かれたモノには、元AP通信社記者が米海軍の封印した事実を追及した「巡洋艦インディアナポリス撃沈(2002.3発行/リチャード・ニューカム著/ソニーマガジンズ・ヴィレッジブックス刊/本体820円)」元伊58潜艦長の実録「伊58潜帰投せり(2001.1発行/橋本以行著/学習研究社M文庫刊/本体720円)」この事件をモデルにしたフィクション小説、将に戦う海の男のドラマ「雷撃深度十九.五(2001.1発行/池上司著/文春文庫刊/本体552円)」がお薦めですので、是非一読を・・・。待てよ軍艦≠ヘどうしたって、そうそう登場するのはオープニングの戦友会シーンの模型と、後は似ても似つかぬ現存のアイオワ°艶艦の一隻を使用した艦上シーン。それと雷撃シーンで伊58潜の潜望鏡に映るシルエットと潜水艦の敵艦識別表(ジェーン海軍年鑑?)記載の図ぐらいで、他は全然登場しません・・・スミマセン。邦画の「謎の戦艦陸奥」と同様に、シーンに登場はしないけど、その存在が大きく影響する作品なんです。
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05月19日(日)
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