ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File108】観戦記10万ヒット目前・・・Shall We タンク!再び【第一弾】

【一枚の戦争画】
まずは一枚の絵を見ていただこう!【九四式軽装甲車奮戦之図】今から数十年前の事、まだ私が小学生だった頃・・・当時、私が通信購読していた少年向け歴史ムック誌「わたしたちの歴史/昭和時代@」の見開き部分に掲載されていた一枚の戦争画・・・怒涛の如く押し寄せる中国軍の攻撃を、キャタピラを破壊され立ち往生しながらも、旋回砲塔の車載機銃と操縦席からの拳銃によって、必死に防戦する豆(小型)戦車・・・当時はまだ、この豆戦車が九四式軽装甲車≠ニいう名称の車両だとは知る由もなかった・・・の勇姿。迫り来る中国兵(蒋介石国民党か共産八路軍かは不明・・・)に対し、満身創痍になりながら果敢に応射・防戦する、この豆戦車の勇姿を手に汗握りながら、そして何よりも、この豆戦車とその乗員の戦車兵は、その後どうなったのかとドキドキ想像しながら、幼な心に何度も何度も繰り返し眺めていた覚えがある。その後歳月は過ぎ、この戦争画を掲載した歴史ムック誌は失われ、成長するにつけ、この戦争画の事も忘却の彼方へと忘れ去られていたが、その反面ミリタリーに関する興味は増大して現在に至り、さらにインターネットの世界に足を踏み入れ『戦争映画観戦記』の執筆を始め、お陰で様々なミリタリーに関する知識の量も増大して行った。そして一昨年の事、観戦記執筆に絡んで『馬鹿が戦車でやって来る』関連の資料を調べている最中、全くの偶然ながら、再びこの戦争画に巡り逢う事が出来た・・・改めてこの戦争画を見てみると、様々な興味深い点が観察出来る・・・爆発直後で、まだ噴煙も治まっていない・・・車体上には爆発で巻き上げられた土砂が積もっている。画面中央では、今将に撃たれた中国軍兵士の手から離れたモーゼルミリタリー(木製ストック付)が宙を舞い、巨匠ペキンパーの戦争のはらわた≠も彷彿させる光景が展開されている・・・中国軍兵士の持つ小銃はモーゼルだろうか?これらの中国軍兵士は、一様に装備が良い・・・と言う事は蒋介石の国民党軍だろうか、しかし共産党の八路軍側も一部部隊は良装備だったはずだ・・・倒れた兵士の背中に背負われた青龍刀がいかにも中国兵らしい・・・そしてこの豆戦車のキャタピラは一体どの様にして破壊されたのであろうか・・・対戦車地雷なのか・・・地雷なら、こんな小型の車体は一発で吹き飛ばされているのではないか?画面中央下にドイツ式柄付手榴弾(ポテトマッシャー型)を今にも投げようと構える中国軍兵士がいるが、ひょっとしたら手榴弾でやられたのか・・・九四式軽装甲車のキャタピラくらいなら手榴弾の爆発でも破壊出来そうだ・・・しかし画面左下に描かれている吹き飛ばされたキャタピラと転輪からすると、こりゃ相当の爆発力だったのではないか・・・少し撓んだエンジン点検用ハッチが、この軽装甲車の装甲の薄さを如実に表わしている・・・なんて事が見て取れる・・・果たして一体・・・その後色々と調査した結果、この戦争画のモデルとなった出来事は、1939年の南昌攻略戦における、ある軍国美談のエピソードが基になっていると言う事が解った・・・
【以下概略】森田部隊(連隊・大隊等の詳細不明)が南昌前面魏家営の山腹斜面に張り巡らされた塹壕と鉄条網の中国軍陣地に対し攻撃を開始した時、味方砲兵の掩護射撃下、松本軽装甲車隊(師団捜索隊と思われる)所属の九四式軽装甲車(車長/川村伍長、操縦/中村一等兵)が、歩兵の先頭を切って敵陣に突入・・・雨の如く降る敵弾を物ともせず、鉄条網を踏み潰し敵塹壕へと肉薄して行った・・・次の瞬間、九四式軽装甲車の直下で爆発(原因は地雷)が起こり、車体は2mも跳ね上げられ地上に叩き付けられた・・・後方の日本軍歩兵たちが固唾を飲む中、塹壕から進み出た中国兵たちが九四式軽装甲車を取り囲もうとした瞬間、突如旋回砲塔の機銃がダダダダッと射撃を開始・・・油断していた中国兵たちはバタバタと撃ち倒された・・・時を移さず日本軍歩兵は突撃を敢行し、中国兵を撃退し、併せて敵陣地を奪取した・・・占領後、戦友たちが満身創痍の九四式軽装甲車に駆け寄り、車内を見ると乗員は全身血達磨となって倒れていたが、その手はしっかりと機銃の銃把を握りしめていた・・・というものである。

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05月08日(日)
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