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ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File126】男たちの硫黄島・・・@イーストウッドの挑戦
クリント・イーストウッドと言えば、その50年以上の俳優・監督人生の中で、幾つかの戦争映画(ミリタリー作品)に関わっています。その代表格は何と言っても『荒鷲の要塞(1968/出演)』『戦略大作戦(1970/出演)』『ファイヤーフォックス(1982/製作・監督・出演)』『ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場(1986/製作・監督・出演)』の四作品であります・・・そしてそれ以外にも、太平洋戦線における上陸用舟艇母艦の活躍を描いた『全艦発進せよ(Away All Boats/1956)』や第一次大戦下の義勇戦闘機隊を描いた『壮烈!外人部隊(Lafayette Escadrille/1958)』そして『Francis in the Navy(1956/内容不明)』なんて作品にも出演しています。特に『全艦発進せよ』では、チョイ役ですが海兵隊(海軍)の衛生兵を演じています。『荒鷲の要塞』と『戦略大作戦』と言えば、戦争映画史上に残る名作戦争映画ですが監督作ではありません。『ファイヤーフォックス』はミリタリー色の強い作品ですが、どちらかと言えば冷戦下のスパイ・アクションの部類の作品です。そんな訳でイーストウッドが初めて監督した戦争映画は『ハートブレイク・リッジ』となるのですが、皆さんもご存知の通り、この作品は落ちこぼれの海兵隊員たちを、朝鮮戦争で名誉勲章を受章した歴戦のタフな古参軍曹が叩き直し、グレナダ侵攻作戦で見事に手柄を立てさせる・・・と言った作品で、後半部にグレナダ侵攻の戦闘シーンが少々ありますが、全般的に観ると本格的な戦闘映画と言うよりは、軍隊・兵営・兵隊映画の傾向が強い作品で尚且つ合衆国海兵隊賞賛映画であると言えます。
ところで、ご存知かとは思いますがイーストウッドと言えば、民主党支持者が多いハリウッドの映画人の中でも、一貫して共和党(現大統領の所属党派)支持者として有名でした。またバリバリの反共産主義者(・・・なので、以前噂に上った様に、イーストウッドが南京事件の作品を製作するなど到底考えられない・・・)で超保守派(リバータリアン)でもあり、ジャズやカントリー等古き良きアメリカの文化や伝統を愛し、自主独立の精神に富み、偽善を激しく憎む典型的で熱烈な愛国者でもあります。しかし共和党支持者にも様々な派閥があり「共和党=タカ派(好戦的)」という図式は一概には成り立ちません。イーストウッドは「合衆国が世界を管理するのはおかしい」「イラク戦争によって合衆国は極めて重大な過ちを犯した」と発言する程で、最近のリベラル派も新保守派も大嫌いというアンチ・グローバリスト≠ニも言われています。私ATFは、戦争映画以外の作品・・・特に社会派作品・・・は殆んど観ないので、イーストウッドが自ら製作・監督し高い評価を得た「ミスティック・リバー(2003)」や「ミリオンダラー・ベイビー(2004)」についての評価は出来ないのですが、ネットで調べた限りの受け売りでは・・・自ら愛する合衆国の社会における不条理や不義を丹念に暴いて行き、常に新しい視点から問題提起を行って来た・・・との事でした。特に「ミスティック・リバー(2003)」などは、バリバリの民主党支持者ティム・ロビンスと、自称「共和党でも民主党でも緑の党でもない無党派」ながらイラクを侵攻したブッシュ政権を激しく批判したショーン・ペンと主義主張を越えて手を結んで作り上げた前代未聞の作品なのだそうです。そんなイーストウッドが次なる監督作品として選んだ題材が太平洋戦争の中でも有数の日米の激戦が展開された硫黄島の戦い▼・・しかもひとつの作品ではなく日米の兵士達それぞれ別の視点から二部作として描く・・・でした。そして米海兵隊を語る上で硫黄島の戦い≠ヘ忘れる事の出来ない戦いであり摺鉢山の山頂に翻る星条旗≠フ写真は、米海兵隊が自らの血によって勝ち取った武勲と栄光の象徴としてアメリカ人の殆んどが知っていると言っても過言ではありません・・・しかし我々日本人にとって硫黄島の戦い≠ニ言っても、かつて「パール・ハーバー(2001)」公開時の観客インタビューの中で日本とアメリカが戦争をしていたなんて知りませんでした≠ニ自慢気に言うネェちゃんたちが大勢いた様に、高齢の戦争経験者や戦史研究者、そして一部の軍ヲタな方々を除けば、殆んど忘れられた存在でしかありませんでした。
【古今東西・・・戦争映画で描かれた硫黄島の戦い=z
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01月01日(月)
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