ID:47402
ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File047】記念連続ドラマ第三夜「プライベート・ライアンとヌーヴィルの雨」 後編
空は微かに明るくなってきたが、今だ雨は降り続いていた。ミラー大尉率いるミニ戦闘団(武装ジープ×2 各種ハーフトラック×4 M8装甲車×1 独軍捕獲車両×1)は、なだらかな起伏の続く平野の中の一本道をゆっくりと進んでいた。ほんの数時間前に味方砲兵隊の掩護射撃によって、大混乱をきたした独軍防衛線の間を突破してきたばかりだが、運良く損害も無くココまでやって来れた。しかし、明るくなるにつれ視界も広がり、敵に発見される確率も高くなる。やがて一行は、やたらと見晴らしの良くなる場所の手前で停止した。優に2kmは遮蔽物のない一本道が続いている。ミラー大尉は停止したジープから降りると、双眼鏡で前方を見渡した。彼方には小さな町・・・というか村・・・らしき建物が見えるが、敵の兵隊や車両は見えない。あれがヌーヴィルの町か・・・このまま一挙に突っ切るか・・・しかし永年の戦場での経験が、彼の脳裏に一抹の不安を思い浮かばせた・・・。「中隊長、どうします?」ジープ上からホーバス軍曹が尋ねた・・・。ミラー大尉は双眼鏡を覗いたまま暫く考えていたが、振り返るとホーバス軍曹に命じた。「軍曹、ドイツ野郎の車をココへ・・・」やがて最後尾から独軍の車両・・・ホルヒ乗用車がやってきた。運転しているのはメリッシュ二等兵。「俺がコイツで先行する。10分経って何事もなければ、部隊を前進させろ・・・もし攻撃されたら、隊を二手に別けて、両方向から攻撃をかけろ・・・ライベン、アパム一緒に来い」アパム伍長はオドオドしながら後席に乗り込み、ライベンはヤレヤレと言うゼスチャーをして見せた・・・一同が乗り込むと、心配気なホーバス軍曹を残し、多少ビビっているメリッシュ二等兵が車を発進させた。田舎道にしては、舗装された走り易い道だ。雨は何時の間にやら小降りになっている。「メリッシュ、俺が合図したら全速でぶっ飛ばせ・・・それまではゆっくりだ」行程の3分の2ほどは何事もなく過ぎた。このまま無事に町の中まで入れるのか・・・。その時!ヒューッ≠ニ音がした途端、一同が乗ったホルヒの僅か前方で爆発が起こった・・・ドッカ〜ン・ン・ン・・・「メリッシュ、全速だ〜ッ」ミラー大尉が叫ぶ・・・恐怖に表情が固まったままのメリッシュがアクセルを思いっきり生テレビ・・・じゃない!・・・踏み込んだ。「急げ〜ッ」ライベンが叫ぶ・・・アパムは後部座席の中で縮み上がったままだ・・・。再び二発目の爆発が、今度は車両の後方に土埃を巻き上げた。スピードを上げた為、目測を誤ったらしい・・・対戦車砲か?やがてホルヒは町のハズレの農家の陰に無事滑りこんだ。ミラー大尉とメリッシュ、ライベンは車から飛び降りると、農家の壁の陰にすばやく隠れる・・・「アパムは何処だ・・・」ミラー大尉が見回すと、未だホルヒの座席に蹲るアパムの姿が・・・「全く世話の焼けるヤツだ・・・」ライベンが駆け寄りアパムを引き釣り出す。「シッカリしろ、トンマめ・・・」そう言いながらオロオロとよろめくアパム伍長を無理やり引き摺ってきた。「一体何処から撃って来やがるんだ・・・」メリッシュが顔を上げた途端、一斉に射撃が始まった・・・。慌てて頭を引っ込めたメリッシュが叫ぶ「畜生〜ッ、テメ〜らいい加減にしねーと割礼≠オちまうぞ〜」途端、路地の向こう側から英語の声が・・・「お前ら・・・米軍か〜ッ」「そうだ〜ッ」ミラー大尉が言い返す・・・。「合言葉を言えーッ」合言葉?▼・・ええと、何だったっけ・・・思い出せない・・・「お前達、合言葉を覚えてるか?」ライベンとメリッシュの顔を見ながらミラー大尉が言った。「早く合言葉を言え〜ッ」ええと何だった、合言葉は・・・。「そうだ、思い出したッ」ライベンが叫んだ「キョ、キョーカイセ〜ン(注釈:境界線)〜ッ」ヒュ〜ッ、ドッカーン・・・バリバリ・・・再び、一同の周囲に無数の銃弾と砲弾が雨霰の如く降り注ぎ始めた・・・「バカヤローッ、違うじゃねーか〜ッ」メリッシュが蹲ってヘルメットを抱え込んだまま叫んだ・・・。「それじゃコレか〜ッ?」ライベンがポケットからブリキのバッタ≠フ玩具を取り出し、カチッ・カチッと2回*ツらした・・・「アホッ、最初は一回だ〜ッ」メリッシュが叫んだ・・・依然として銃撃は止まない・・・「あの〜ッ」切羽詰まった状況の中で、相変わらずテンポの合わないアパム伍長が呟いた「あの〜雷鳴≠ニ稲妻≠カゃないでしょう・・・か?」ミラー大尉が叫ぶ「雷鳴〜ッ」・・・「稲妻〜ッ」応答とともに銃撃が止んだ。「やれやれ・・・」ミラー大尉はヘルメットを脱ぐと額の汗を拭った。路地の向こうから米兵の一団が姿を現す。「101空挺のヒル軍曹です・・・」先頭の頭の薄くなった下士官が、右足を引き釣りながら近づき右手を差し出した・・・。「待ちに待った援軍ですね」「申し訳ないが、我々は援軍じゃない。ライアン≠ニいう兵士を探している」呆れ顔の軍曹が言った「やれやれだ・・・まったく。何処のどいつです?何のために?」その時、遅ればせながら、ホーバス軍曹に指揮された後続隊が追いついて来た・・・。「気をつけて下さい、町はドイツ軍に分断されていて、あちこちに狙撃兵が潜んでます・・・ええと誰でしたっけ?」ヒル軍曹が右足首を擦りながら尋ねた。「101空挺のジェームズ・ライアン二等兵だ」「町の反対側の混成部隊の方にいるかも・・・でも無線が通じないんです。伝令も次々に撃たれて・・・連絡の取り様がありません」「解った・・・警戒しながら前進しよう。軍曹、君たちもく来るか?ウェイド、軍曹の足首を診てやれ・・・」「やれやれ有り難い・・・」「ホーバス軍曹、部隊を二手に分ける・・・グレイハウンドと武装ジープ2台が先鋒、ハーフトラックは空挺隊の負傷者を載せて後続しろ。」「了解・・・」疲れきった空挺隊員を乗せ、警戒しながら部隊は町の中央部へとゆっくりと進んで行った・・・。

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06月30日(日)
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