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ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File036】レプリカとCGのあいだ・・・戦う翼たちの戦後@
前述の如く、第二次大戦後60年近く経った現在、飛行可能な二次戦機、俗にウォーバード≠ニ呼ばれる機体の数は激減しています。戦車や軍艦は基本的に動力源が二次戦時と一部変わっている(高性能タービンエンジンや原子力エンジン等)とは言え、キャタピラやスクリューで走るという機構は変わっていません。しかしながら航空機、特に空戦の主役である戦闘機や爆撃機は、プロペラで飛ぶレシプロ機からジェット機へと、その推進機構が大きく変化しました。したがって旧式レシプロ軍用機の各国空軍における需要は、一部特殊用途(訓練や救難、局地戦等)を除けば極端に少なくなった為、各国空軍、特に戦勝国である連合国側でも、二次戦後多くの機体がスクラップとして二束三文な価格でスクラップ業者に売り飛ばされました(一部は数年後に発生する朝鮮戦争時に高額≠ナ買い戻されたり、民間航空に払い下げられたり、後進・・・じゃない発展途上国での独立戦争や内戦を戦う事になります)。この時一部の心有る人々(お金持ちではなく一般の有志たち)がスクラップとして潰され解体されたり、溶鉱炉で溶かされる直前の幾つかの機体を、困難な状況の中、救出します(後年、このスクラップ直前から救われた機体が宝石≠ノ変わります)敗戦国ではもっと状況は厳しく、一部研究材料として戦勝国側に引き取られた機体を除き、終戦時に残存した機体はほとんど焼却、爆破、埋没、海没などの運命を辿りました。
米軍爆撃機を代表する2機種に限って見ても以下の数字には驚かされます。
★B29 生産数 3900機→現存29機(内現在飛行可能 1機)
★B17 生産数12000機→現存45機(内現在飛行可能14機)
【スクラップ変じてお宝≠ニなる】
しかしココで人間たちのエゴが発生します。あれだけ大量にあったモノが、いざ無くなってみるとなんでこんなコトに≠ニ嘆くのが人間の性分。片っ端から撃ち殺し絶滅させた動物は数知れず。また壊しまくり、掘りまくった歴史的遺物も計り知れません。元々少ないモノの価値が高いのは当たり前ですが、溢れるほどあったモノが、急激に少なくなり、希少になると価値が上がるのは悲しいかな当然の理です。所謂コレクターズ・アイテム≠ニかヴィンテージ・アイテム≠チて呼ばれ、一部お金持ち、それも半端じゃない億万長者な方々にとってのこの上もないお宝となる訳です。まあ、これは航空機に限らずAFVでも同じですが・・・でも軍艦を個人で所有してるって話は聞かんなぁ〜。
【戦争映画のスターウォーバード≠スち】
こうなると戦争映画に出演するスターウォーバード≠スちの出演料も急激にハネ上がる訳です。「遠すぎた橋」でのロバート・レッドフォードの出演料が破格だったのは有名な話ですが、それに匹敵する・・・いや、それ以上かも。第一お付きのスタッフ(整備・補給・運送等)も半端じゃない。何分御老体ですから、墜落でもされたら大事です。保険金もバカになりません。モノ黒映画であれば、飛行シーンに実写記録フィルムを組み合わせたりできますが、カラー映画が当たり前の今日、カラーの記録フィルムは限られます。白黒で撮影されたフィルムを画像処理によってカラーにするって手もありますが、やっぱねぇ〜。前にも書きましたが「メンフィス・ベル」に使用されたウィリアム・ワイラー監督による実写フィルム位が限界じゃないでしょうか?この作品では、飛行可能な実機(確か3機)と地上撮影用の数機、そして編隊飛行シーンには、実機3機の様々な角度から撮影された多くのカットと実写フィルムが使用されています。さあ、こうなるともうスクリーンでゼロ戦≠竍グラマン∞メッサー∞スピット∞B17≠フ雄姿は観れなくなるのでしょうか・・・。
最早、重要文化財となってしまった二次戦のウォーバード≠スち。スクリーンを通して、彼らの躍動する大馬力エンジンやプロペラの噴流は伝わらなくなってしまうのでしょうか・・・次回は、ロマンを求め世界中のマニアやコレクターを楽しませる為に世界中を飛び回る方々のお話です。
今回のカキコミの一部は文春文庫刊「幻の大戦機を探せ」K・ホフマン著 北澤和彦訳を下敷きにしています。【続く】
04月07日(日)
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