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ATFの戦争映画観戦記
by ATF
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■【File005】世界最初の戦争映画って何?
戦後、社会の復興とともに日本映画界も復興し、軍隊から多くの映画人が復員してきたことにより多くの作品が制作されます。これらは軍隊内部暴露、戦争の悲惨さ、非合理性、非人道性を扱った作品が多いようです。1950年代〜60年代にかけて高度成長による生活のゆとり創造とともに、娯楽作品としての戦争映画が多数制作されます。これらはアクション・任侠映画や特撮映画としての一面も兼ね備えているのが特徴です。その後は、幾つかの大作と呼ばれる作品が制作されますが、洋画作品の大量流入による日本映画の人気下降による影響で、経費のかかる戦争映画の制作は一挙に減少しています。
【ドイツ】
第一次大戦の敗戦後、政治の実権を握ったヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働党(略してナチス)の庇護のもと、ファシズムや国家への奉仕を礼賛する作品が数多く制作されます。ナチスが政権を握るとゲッペルス宣伝相により、この傾向は一層進み、加えてドイツ民族優位ユダヤ民族排斥が顕著になります。
第二次大戦勃発により、前線での兵士の姿を描いた作品が多数制作され、記録フィルム(ドイツ週間ニュース)とともに国民に公開されました。
戦後は、旧軍の非人道性や非合理性を描いた作品が多数制作されますが、ネオナチズムの成長とともに、政府によるナチス排斥が行われ、国内での旧独軍を描いた作品が制作できなくなります。この傾向は1981年の「Uボート」の公開まで続きます。
【旧ソ連】
1917年のロシア革命により政権を握った共産党の庇護の下、芸術性の高い映画が多数制作されますが、戦争映画的な作品は少ないようです。
第二次大戦では「大祖国防衛戦争」のスローガンのもと、戦場での英雄行為や共産主義を称えた作品が幾つか制作されます。
戦後の東西冷戦の中で、共産主義助長の一貫として1950年代後半から1970年代にかけて戦争映画史上に名の残る超大作や名作が幾つも製作されますが、アフガニスタン侵攻を経て共産主義体制の崩壊とともに、ソ連映画界自体も衰退し、ここ最近では殆んどロシア制作の戦争映画は観ることがありません。
【フランス・イタリア】
優れた映画制作技術とスタッフを擁する両国ですが、フランスはドイツによる占領、イタリアは実質的敗戦国という訳で、戦争中に発表された作品は少ないようです。ただ両国とも戦後は精力的に映画が制作されています。
フランスでは、占領下の反独地下抵抗運動を描いた作品が幾つか制作されますが、フィルム・ノワール主義に代表される暗黒街のギャング主体の作品や男女のロマンスを描いた作品の人気が高い為か、戦闘シーンを主体としたような作品は少ないです。その後は植民地(アルジェリア・インドシナ)での戦いを描いた作品が制作されるようになります。現在ではアクション映画が主流で戦争や軍隊を描いた作品は少ないようです。
イタリアでは、戦後直ぐにロッセリーニ監督に代表されるネオリアリズム主義による作品が政策されますが、派手な戦闘シーンを描くよりは、戦場での兵士の姿や戦時下の一般民衆の生活を描いた作品が多いようです。その後ハリウッドでの西部劇人気の影響を受けたイタリア製戦争映画いわゆる「マカロニ・コンバット」モノが多数制作される訳ですが、この分野は、戦争映画ファンの中でも一分野をなすほど根強い人気を誇っています。また同時期にエログロを主体とした「ナチ女収容所」モノも多数制作されます。朝鮮戦争での野戦病院を描き戦争を風刺した名作「MASH」の影響を受けた軍隊風刺劇「マッシュ・イタリアーノ」シリーズも多く制作されますが、ここ最近ではイタリア製戦争映画自体あまり聞かなくなっています。
【イギリス】
第二次大戦時、アメリカの参戦まで単独でドイツとの戦いを行ったイギリスでは、一般民衆も日々の生活が戦争と密接していただけに、戦意高揚の作品が多く制作されたようです。日々独軍機の爆撃を受け、Uボートによる物資輸送への妨害により生活の困窮を余儀なくされた市民にとって、苦しい戦いっを続けながらも最後は勝利を勝ち取る(または勝利のための犠牲となる)前線の兵士たちや物資輸送の船員たちの姿は、自分たちの苦しい生活への励みとなった訳です。
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10月28日(日)
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