ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『いのこりぐみ』
『いのこりぐみ』@IMM THEATER
モンスターペアレントの「クレーム」を聞くべく学校にいのこっている教師ふたり。母親の要望をどこ迄聞き入れればいいものか……ミステリのフォーマットを使い、全体主義を生みかねない教育についてもひと刺し。息を呑み続ける1時間45分、めちゃめちゃ面白かった! 『いのこりぐみ』
[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Feb 7, 2026 at 22:07
終幕、暗転した場内のあちこちからはぁぁ……と感嘆のため息。リズムよく会話を進め、その言葉の端々に登場人物の背景が浮かび上がるホンの巧みさ。そして演者の、台詞に繊細な表情をつけるスキルの高さ。苦い話だけど後味は悪くない、その塩梅が見事。三谷幸喜の冴えた筆と、4人の出演者の力量による充実の舞台。
人当たりも要領もよい教師と、波風立たせず定年を迎えたい教頭。問題提起の表現が下手な母親と、その問題の本質をすり替え続ける担任教師。全員が子どもの教育というものに曲げられない考えを持っている。その考えは正しいのか。正しいとは何か。その引っ掛かりを決して見逃さず、一刻も早く帰りたい筈の「名探偵」は「クレーム」に向き合う。ジムに行きたいのに(笑)。「クレーム」を早く片付けたい教頭も、彼の訴えを見過ごすことはしない。ゴネてはいたけど(笑)。かつて教師とその教え子だったふたりに、教師たるもの、という矜持は確実に継承している。そのことに心が軽くなる。
子どもたちを味方につけている(と暗に示す)担任教師は、生徒全員を公平に、平等に、均質に育てることこそが教育だと思っている。人間なのでそのつもりはなくともえこひいきしてしまうかもしれない、という物言いの根には、「自分の思い通りにならない生徒を排除したい」という思いがある。自分のいうとおりに動き、その指導に疑問を持たず、付和雷同する子どもを育てたい。そうして育てた子どもたちに賞賛されたい。「教育」の恐ろしさを自覚している教師は今どのくらいいるのだろう? そして、その「教育」を教師に押し付けている親は? 教師という職業の過酷さが描かれる。そのことに心が重くなる。
登場人物は、いや、ひとは皆、完全無欠ではない。母親も担任教師も問題を抱えている。しかし、彼女たちを「正しくない、間違っている」と喝破出来るものだろうか? とはいえ、担任を慕う生徒たちのことを考えてしまう。TikTokを見ている子は多いだろう。汚部屋に置かれた「コースター」が何か、気付いた子もきっといる。そのとき彼らはどう感じるだろう。担任教師の罪を思う。しかし、「いのこりぐみ」のふたりはきっと解決策を見出してくれる筈だ。そう思いたい。そして、母親もこんな教師がいることを知り、彼らのことを少しだけ信じてみよう、「一心同体」の息子を安心して預けられると思ってくれればいいな。
母親役は菊地凛子、初舞台とは思えない貫禄。大仰な立ち回りや台詞回しに、理解者を求める切実さが滲む。三谷さんうまいことあてがきしたなあと唸る。そしてとても舞台に合ういい声! 母親を「あ〜めんどくせえ〜でも憎めねえ〜」と思わせてくれたのは声の力も大きい。声といえば、柔らかい声と恐ろしい声を使い分け、担任教師の闇深さを表現した平岩紙も素晴らしかった。教頭に目配せし、リズムを合わせ謝罪の言葉を並べる気持ちわるさといったらなかった。バランサーの教頭を演じた相島一之の、事勿れ主義に流されきれない真っ当さには心を動かされた。ただ真っ当であることが今どれだけ難しいことか。しかもそれにはユーモアがまぶされている。これも相島さんのニンが反映されたあてがきに感じる。
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02月07日(土)
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