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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『キャプテン・アメイジング』『みっつ数える前にあんたは… ひとつめの夜』
『キャプテン・アメイジング』@シアタートラム
モノローグではなく登場人物たちのダイアローグ全てをひとりで語る。これは難物なホンだなと思いつつ観ていたのだが、最後の最後、それらの対話が悲しみ、戸惑い、怒りをもってひとりの人物に襲いかかる。演者の熱量に完全に持っていかれる。不思議な余韻を残す作品でした 『キャプテン・アメイジング』
[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Aug 3, 2025 at 1:22
ラストシーンで「ああ、全てのキャラクターの言葉をひとりに語らせたのはこのためだったのか!」と心がリリースされるような感覚があった。「スーパーヒーローに扮する一人の男とその娘の、たった6年間の胸が張り裂けるような冒険の物語」。アリスター・マクドウォールの戯曲を田中麻衣子の演出で。
客席後方から登場した男は、観客にちょっとした話をする。暑いですね、水分補給してますか? 大丈夫ですか? 水飲んでくださいね。僕も飲みますんで。……ラムネの瓶に入っているあのガラス玉、なんていう名前か知ってますか? ……エー玉っていうんですって。ほんとですよ、帰ったら調べてみてくださいね。観客からちょっとした笑いが起こり、場が和む。マントを羽織った彼の物語が始まる。
とにかくせわしなくストーリーが進む。ぎこちない男女の出会い、娘の誕生、キャプテン・アメイジングの戦いの日々が、細かく刻まれたシーンの連続で差し出される。目まぐるしく交わされる対話をひとりの演者が全て語る。男性らしい言葉、女性らしい言葉、幼女の、スーパーヒーローらしい言葉。声音と仕草を変えることで演じ分ける。うーん、“ひとり芝居らしいひとり芝居”だな、とちょっと退いて観ていた。ところが、だ。
対話によってやがて見えてくるのは、このカップルは歳が離れているということ。男性の方はまだかなり若いということ。子どもができるのは想定外だったこと。娘が幼くして病に倒れ、死が目前に迫っていること。視覚として不明だった登場人物の属性が対話で明らかになっていく。構成の妙に唸る。数年のうちに話し、聞いたであろうあらゆる対話が、娘の死を前にしたキャプテン・アメイジングの心で決壊する。このための膨大な言葉だったのか、と気付く。
キャプテン・アメイジングの心象風景のようなパースの室内(美術:山本貴愛)、ベビーメリーの響きで表現される娘の誕生とその声(音響:鈴木三枝子)が素晴らしかった。カラコロという、文字通り鈴の転がるような音と対話するキャプテン・アメイジングの表情と仕草。娘が壊れないように、娘を慈しむように。美しいシーンだった。
さて、いわれた通り、帰宅後エー玉について調べてみた。デマだという説がある。しかし実際にA玉、B玉という言葉が使われていたという人物の証言もある。そして、興味深いコラムを見つけた。
・ビー玉とB玉┃化学教育 徒然草
インターネットを使うと情報は簡単に集めることができる。しかし,かなりの時間を使って自分で考えないと,内容を誤解し,正しく理解できないことがよくわかった。
日替わりのアドリブだろうかと笑ったエー玉の話は、キャプテン・アメイジングの6年間を暗示するかのようなものだった。ひとひとりの人生は複雑なもの。表層だけで理解することなど出来やしない。
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平岩紙さんとのふたり芝居『あたま山心中』が素晴らしかったので、極限迄出演者を絞った=ひとり芝居の近藤公園さんを観てみたかった。今回その願いが叶ってうれしかったです
[image or embed]— kai (@flower-lens.bsky.social) Aug 3, 2025 at 1:23
『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』での近藤さんの狂気がかなり魅力的だったんですよね。今回その狂気がまた観られた。目がいい、目が。無精髭、バサッとした髪というルックもよかった
・入場するとRadioheadの「Just」がかかっていておおっとなる。これは作家の指定なのか、演出が選んだのか気になるところ
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O.L.H.(Only Love Hurts a.k.a. 面影ラッキーホール)『みっつ数える前にあんたは… ひとつめの夜』@Shibuya WWW
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08月02日(土)
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