ID:43818
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by kai
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■東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来 Mongolia is coming』
東京サンシャインボーイズ 復活公演『蒙古が襲来 Mongolia is coming』@PARCO劇場

泣いたり笑ったり震撼したり カゲアナが豪華なので開演15分前くらいには席に着いとくといいかも 東京サンシャインボーイズ復活公演『蒙古が襲来』

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半分冗談だったであろう「30年後に再結成」が実現したことは、とても幸せなこと。そこに伊藤俊人がいないことは、とても寂しいこと。

何を書いてもネタバレになりそうだ…けど事前に発表されていたように伊藤さんもいます むしろ笑うシーンなのに泣いちゃった…あなたもワタシもみーんな歳とったなーでも伊藤さんはずっとあのときの伊藤さんだよ

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それでも劇団は、伊藤さんの声を連れてきてくれた。かつて、演劇は“風に記された文字”であるため記録には残さないことをモットーとしていた第三舞台の鴻上尚史が、岩谷真哉が亡くなった際ご両親にお渡し出来るものがないことを悔やんだというエピソードを思い出す(写真はあったし、その後音声も提供があったんですよね)。伊藤さんの残された声は、今回舞台に立っていた。

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750年前のある一日を115分で。膨大な時間、ちっぽけな人間の、それでも芳醇な一生。三谷幸喜が役者に「当て書き」する、ひとりひとりの人生。『リア玉』ではなくこれをやることにした意味、というのはやはり考える(三谷さんは「玉の製作に時間がかかって無理になった」とかいっていたが・笑)。タイトル通り元寇前の話。蒙古は来るのか? 来ないのか? 長崎のちいさな島にさざ波が立つ。歩き巫女や鎌倉幕府、壇ノ浦で失われた宝剣など、『鎌倉殿の13人』視聴者が「ああ!」となるモチーフを絡ませつつ、来ないと楽観的なひと、来ると疑心暗鬼なひと、来るという実感があるのにそれを敢えて隠すひとと、右往左往する市井の人々を描く。

観客は史実を知っている。しかし物語はその「知っている」をもう一段階掘り下げ観客に示す。あまりにも残酷な、それでいてなかったことのようにされている史実を。神風とやらが吹く以前に起こったこと──対馬侵攻や壱岐侵攻を、どれだけのひとが普段意識しているだろう。宮地雅子の台詞はストレートな分強烈。幕府の功績がなんだというのだ、いつだって矢面に立ち犠牲になるのは市井の人々なのだ。演劇は現在を映す鏡だということを劇団は見せてくれた。

では2011年に、三谷さんが『国民の映画』を書いたのは何故だったのだろうなんてことも考える。『国民の映画』は『三谷幸喜生誕50周年企画』として連続上演された作品の一本だったが、ラインナップ中唯一三谷さん自身からの企画だった。今回、最後に登場人物が観客に語りかけるという手法は『国民の映画』でも起用されていた。あれは死者からの言葉だった。昨年ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの言葉、「過去が現在を助けている、死者が生きている者を救っている」を思い出す。

歩き巫女は観客に呼びかける。あのとき生き残った(かも知れない)者、しかし現在からすればとうの昔に死んでいる者。此岸と彼岸から投げかけられた、希望にも絶望にもなるその言葉をひしと受け止める。鮮やかな幕切れ。


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03月01日(土)
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