ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■結成20周年記念『ダンスフロアのペペ・トルメント・アスカラール』
SHINJUKU BLAZE LIVE SERIES 結成20周年記念『ダンスフロアのペペ・トルメント・アスカラール』@新宿BLAZE

よすぎた BLAZEお世話になりました有難う〜 pic.twitter.com/3kUkGcULF9— kai ☁️ (@flower_lens) July 31, 2024
今夜は格別だった。演奏もセトリもフロアも。菊地成孔にはいつも地獄の歩き方を教えてもらう。

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菊地成孔(sax/vo/cond)・大儀見元(perc)・田中倫明(perc)・林正樹(pf)・鳥越啓介(cb)・早川純(bn)・堀米綾(hp)・牛山玲名(1st vln)・田島華乃(2nd vln)・舘泉礼一(vla)・関口将史(vc)
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スタンディングのぺぺは10年ぶりとのこと。個人的にはLIQUIDROOM ebisuの『1000年後の南米のエリザベス・テイラー』以来、14年ぶりです。これが5周年記念で2010年。10周年記念『歴史は夜作られる』は2015年だったので、なんか1年早まってますね。秋にはリリパもあるし、一連のシリーズとして来年迄続くのかな。ところでなんで私15周年観てないんだっけと思ったらあれだ、コロナ禍で仕事のスケジュールがぐっちゃぐちゃになってて帰れなかったんだ。しかもサントリーホール…痛恨……(泣)。

今のメンバーになったのは確か2017年から(『戦前と戦後+』辺り)なので、スタンディングでのワンマンはストリングセクションの4人にとっては初めてだったと思われる。新宿BLAZE最後の公演に、ペペ・トルメント・アスカラールが初めて出演する。閉館するライヴハウスへのはなむけに、葬送と祝祭を奏でるこの楽団は申し分ない。そう、ぺぺは初めてだったんですよBLAZEに出るの。最終日に初出演!? と思ったんですが、菊地さんには縁のある場所なので納得。ここ、『歌舞伎町のミッドナイト・フットボール』の舞台となったホテルケントが入っていたビルでもあるのです。おお〜調べてみたら発刊したの丁度20年前じゃないの。こうして街は変わっていくのね。

今の酷い世界で生き抜く術としての音楽を、ダンスを、リバウンドを起こさないように緩やかに。という諸注意(じゃないな……なんだろ、提案? お誘い?)、自慢のメンバーをひとりずつ紹介、そして「真ん中にチームタイム1曲、あとはブードゥーからビバップまで。一気にブッ飛ばします」という前口上から開演。その時点でもう胸が熱くなってたんだが、果たして始まった演奏は、こちらの想像を遥か上回る旅になった。

「闘争のエチカ」の切迫、「京マチ子の夜」で優雅を、「Caravaggio」で官能を。鳥越さんのベースが鋭く揺れ、笑顔で林さんが応える。「Killing Time」では牛山さんがスタンディングでソロを弾き、「牛山ー!」なんて声も飛ぶ。牛山さんこんな現場初めてでは? とハラハラしたが、当人はにっこりと微笑んだまま、エレガントかつ獰猛なトレモロとボウイングを次々と繰り出す。「暗くなるまで待って」がチークタイム。「どんな人生にも、チークタイムは存在する」といったのは15年前のグローブ座。その時間が再び訪れた。アニメの話題から「Thundercatに有難う」(サブスクのプレイリストに入れてたんだって)と「嵐が丘」、そして「色悪」。久しぶりにやるんで出来るかなと「儀式」(!)、そして早川さんの導入ソロに涙した「ルペ・ベレスの葬儀」。なんて痛切、なんて甘やか。オールドスクーラーの偉人ふたりが叩き出すリズムにクラーベとカウベルが重なる。起点が移動していく、フロアが沸騰する。

音楽への敬意と情熱。ダンス、歓声、慟哭。寂しく幸せな2時間半。天国と地獄だ。

フロアのことがよく見えている。楽曲を提供している新音楽工房の面々を見つけ出し声をかけ、後方にいる客に「(バーカウンターとフロア間のドアが開いていたので)冷蔵庫のとこ迄ひとがいる。もっと前に入っておいでよ」と呼びかける。「今日で最後なんで解体したいひとは解体しちゃってください。ドア外しちゃったりね。解体得意なひといるでしょ? あの緑のやつ(非常口誘導灯)とか外しちゃって」「いつもめちゃくちゃなこといってると思われてるけどリスクを背負った上でいってるんですよ! 怒られるの覚悟なんだから!」。唄い、奏で、踊り、喋り倒す菊地さんと、緊張と弛緩を行き来する楽団。


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07月31日(水)
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