ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール 結成20周年記念巡回公演『香水』
METROPOLITAN JAZZ vol.2 / 菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール 結成20周年記念巡回公演『香水』@東京芸術劇場 プレイハウス
びえ〜20周年おめでとうございます! なんかおらおらでひとりいぐもみたいな楽団になってきたな…えっそんな、林さん何弾いてんの? 鳥越さん何ブッ込んでんの? と思っているうち早川さんのソロに落涙し牛山さんのカデンツァにエキサイトし菊地さんのテナーに手に汗握りソプラノに感激し歌に文字数 pic.twitter.com/u3dDnSmM1G— kai ☁️ (@flower_lens) May 2, 2024
菊地成孔AIが出現したら、なんてこともボンヤリ考えたのでした。身体が衰えず、歌のピッチが揺らがず、リードミスが全くなく、健康で、精神的にも安定していて、エレガントでワイルドな菊地成孔。技術的には可能な日が来るだろうし、楽曲制作に関してはご本人も肯定(推奨?)しているけれど、やっぱりそれは面白くなさそう。というか、むしろそのAIのバグを期待してしまいそう。で、バグったら喜んじゃいそう(ヒドい)。演者がAIならば聴き手もAIで代替したらどうか?……ヤダーッ(ちいかわ)こちとら会場へ移動してる最中も劇場に足を踏み込んだ瞬間も開演前にトイレに並ぶことすら高揚しとるんじゃーッ(笑)。いやあ、好きなんだよね開演前とか幕間にトイレ並んでるときの気分……もはやその感覚の再現もAIには可能なのだろうが〜、その楽しみを味わうのは一体誰なのか?
楽曲はずっと残るが、その身体で奏でられた演奏はどれも二度とないもの。「いい演奏」と「よくできましたという演奏」は違うものだ。対する聴衆にも、精巧と粗悪はあるのだろうか。AIの演者とAIの聴衆。不気味の谷が埋め立てられるのはいつのことだろう?
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菊地成孔(sax/vo/cond)・大儀見元(perc)・田中倫明(perc)・林正樹(pf)・鳥越啓介(cb)・早川純(bn)・堀米綾(hp)・牛山玲名(1st vln)・田島華乃(2nd vln)・舘泉礼一(vla)・関口将史(vc)
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「ジャズのいまとこれから」を東京から世界に発信するシリーズ『METROPOLITAN JAZZ』のプログラムでもありました。芸劇での演奏はお初。所謂劇場では、2009年と2012年に東京グローブ座で演奏していますね。……って、これ読み返してて、すっかり忘れてて自分でもうまいこというなあと思ったんですが(笑)PTAって、菊地さんが抱える数多のプロジェクトのなかでいちばんストリップ感が強く、彼の抱えている情熱(としか言いようがない)がより素直に感じられる。手負いの獣の手触りを感じるんですよね。それを官能といえばいいのだろうか。聴き手は残酷なもので、そうした姿と囀りにすらどうにも快楽を感じてしまいます。
とかいいつつも、ウットリとハラハラは紙一重。一曲目の音響が中森明菜の『不思議』(大好き)かってくらいヴォーカルが奥に行っており、ううーむこのまま行くのか? 菊地さんの声が弱ってるのか? などと思う。2曲目の「Caravaggio」はMCからのリーディングという構成で声が先にあるので、そこでバランスをリカバリしたように感じた。以降は問題なし。冒頭の音響は意図的だったのだろうか。
そして考えてみれば、当方術後テナーを演奏するのを初めて聴いたのだった。テナーを手にとる度にドキドキする。ソプラノだと全然大丈夫なのだが……以前マウスピースがちいさい程演奏が難しい、サックスならテナーよりソプラノの方が音を外しやすいし、オーボエやファゴットとなるとダブルリードなのでもっと難しいと聞いたことがあるが、菊地さんの場合は逆なのだ。これが不思議。終演後「マウスピースが大きい分、咥えるのに力がいるんじゃないかな」「しっかり噛みしめる力の回復待ちなのかも」「歯茎がまだ安定していないか、今の感覚でどう鳴らせるか探っている途中なのかも」などと話す。あのねえ、それが嫌だっていうんじゃなくて、そのプロセスを観られる/聴けることもこちらとしては幸せだったりします。そういうところがストリップ的と感じる所以かな。ヒドいことばっかりいってますがすごく心配してるんですよ! おだいじにですよ! 元気でいて!
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05月02日(木)
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