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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『配信犯罪』、ケムリ研究室 no.3『眠くなっちゃった』
『配信犯罪』@シネマート新宿 スクリーン1

ほんで昼はこれでした。おお!? 予想外に(失礼)面白かったよ! ソンウンさんが主役の根拠みたいなものに納得出来て胸がすく思いもするんだけど後味は苦いという一筋縄ではいかない幕切れでした pic.twitter.com/SkV3EhD56q― kai ☁ (@flower_lens) October 14, 2023
原題『라방(ラバン)』。2023年、チェ・ジュヨン監督作品。「라방」を翻訳アプリに入れるとそのまま「ラバン」と出る。どういう意味? と調べてみたら。

・라방(ラバン)=「ライブ放送」┃TODAY'S韓国語┃韓国旅行「コネスト」

「라이브 방송(ライブバンソン)=ライブ放送」の略語なんですって。生配信のことですね。

全くのノーマークで、予告編を映画館で観て初めて知った作品。恋人が怪しい生配信の餌食に! 青年は彼女を助けられるのか? というサスペンススリラー的な内容らしく、うわ〜すごいヤな話っぽいな〜胸クソ悪そうだな〜と思ったのですが、ひっかかったのはパク・ソンウンが出ていること。生配信の主がソンウンさんで、クレジット的にはこちらが主役らしい。原作は学生が撮った短編、チェ・ジュヨン監督は今作が長編デビュー。題材もなかなかリスキーなもの。こうした作品の主役をソンウンさんが引き受けるということは、ただの悪趣味な内容という訳ではなさそう…いやしかし……とそれでも迷っていると、試写を観たひとが「最後に成程と思う展開がある」というようなことを書いている。やっぱり観てみるか、と思った次第。

で、やっぱり胸クソは悪いのです。そして最後に成程とも思った。観てよかったと思った。でも、心は晴れない。直接的な残虐場面がないため、今作には年齢制限がありません。何故そうなのか。配信を、web上のコンテンツを楽しむ誰もが見るべき、と迄はいわなくても、知っておいていいことだからです。興味本位で闇配信を観てしまう。犯罪に接しても、見て見ぬふりをしてしまう。そんな傍観者にスポットが当たっています。誰もが加害者になり得る。以下ネタバレあります。

韓国で実際に起きた「n番部屋事件」がもとになっているかと思いきや、脚本は事件が公になるよりも前に書き始められていたとのこと。「n番部屋事件」の詳細はあまりにもむごいのでこちらで詳細は書きませんが、とにかくおぞましい事件です(後述リンクに概要あり)。3700人強が逮捕されましたが、サイトの閲覧者数は26万人にものぼります。逮捕されなかった傍観者は罪に問われていません。罪に問うこと自体が難しい。ソンウンさん演じる“ジェントルマン”とその仲間たちは、そんな傍観者たちを表舞台に引きずり出すのです。

それが判明するのが最後の数分。観る側としては「これは配信者側に何らかの思惑がありそうだなあ」と思い乍ら観ていて、最後に「ああ、やっぱり」とは思うのです。この手段を選んだ彼らは、加害者に、傍観者に、無関心だった人々に、どれだけ苦しめられたか。いや、今も苦しめられているか……過去形ではなく、永遠に続くことなのだ。計画がうまくいったとしても、被害者は元の状態には戻れない。でも、傍観者たちに気付いてほしい。自分たちがしでかしたことを。いや、自分たちが何もしなかったことを。そんな思いに満ちた幕切れ。

いやもうホントソンウンさん、ひとをムカつかせる演技巧いよな。いや演技全般巧いんだが。ひとを笑わせたりホロリとさせたりする演技も巧いのよ。わかっているのにムカつく、素晴らしい。あーホントムカつく、このクズ野郎のゲス野郎があ! と迄思う。それだけに最後の数分が胸に迫る。『空から降る一億の星』のときにも思ったけど、ソンウンさんの泣き声ってなんか独特ですよね。なんかギョッとする声で、猛獣の咆哮っぽいというか。

彼女を救うべくがんばる彼氏役のパク・ソノも迫真の演技。もはや気の毒。とりあえず友人関係を見直しなさいとは思った(あいつらホントムカつくな〜!)。あのあとふたりはどうなったんだろう。元の幸せな関係には戻れないよなあ。いや、そもそも、彼女は目的ありきで彼に近づいたのかも? 疑心暗鬼になり、やはり後味は苦いのでした。

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10月14日(土)
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