ID:43818
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by kai
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■赤堀雅秋一人芝居『日本対俺』
赤堀雅秋一人芝居『日本対俺』@ザ・スズナリ

『日本対俺』ー! 赤堀さんの書くものって、人間の醜悪さを見て笑ったり糾弾したりするそんなお前は何様だと痛感させられるところが耳が痛すぎて好き そうさなあ、大根さんのいう通り観客の方が罰ゲームだったのかもしれない pic.twitter.com/tMvRAjHrXw— kai ☁️ (@flower_lens) September 29, 2023
地を這う者を蟻の視点で見つめ、「そういう人物」を第三者の視点で描く。鳥瞰の作家。

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1. COVID-19
2. インフラ対策
3. 8050問題
4. 無敵の人
5. SDGs
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作・演出・出演:赤堀雅秋、総合演出:大根仁。5本立てのオムニバス。

スズナリはみちみちの満杯。そうそう、こういうの久しぶり。こういうのが好きだったんだよと思い出して開演前からせつなくなったりする。THE SHAMPOO HATの前身はパフォーマンス集団で、ショーレストランが活動の拠点だったとのこと。こうした短編もよく上演していたのかもしれないと思いつつ観る。

ほぼ素舞台で、演目ごとに椅子、看板、ベンチ等のちょっとした調度品が用意される。開演1本目の設定がサウナ。当然全裸。ツカミは完璧。前方席だったが前張りがチラチラ(きちんと?)見えていたので、ある意味安心して観る。サウナから工事現場、年老いた父と中年の息子が住む家庭、ベンチ、スナックと場面は移り、それぞれ人生どん詰まりの52歳男性が毒を吐いたり弱音を吐いたりする。そこにいるのは下品で、差別的で、不潔に見える人物。それを観て笑いつつ、身につまされる観客。

赤堀さんの筆に凄みがあるのは、醜悪な自分を見ている自分、を見る観客、という地点に迄しっかりリーチするところだ。差別なんかしません、ではなく、つい差別してしまう自分がいる。下劣で卑しくなってしまう自分がいる。そんな人物は第三者からこう見えている。それを見てあなたは笑うんですか? 顔をしかめるんですか? 気付けば切っ先が自分に向いている。人類が滅びればいいんだよーという台詞は、常々自分もそう思っているだけにグッサリ。無責任だからそういえちゃうんだよね。人類は好きではないけど、だからって未来の人類のことを今の人類が投げちゃっていいことにはならないのだ。

唸ったのは「無敵の人」パート。おそらく『動物園物語』をモチーフに、無差別殺人を起こそうとする人物を描いているのだが、ハッキリそれを「無差別殺人ではない」といっているところ。弱い女子どもを狙う。「誰でもよかった」なんて都合のいいことはいわない。そしてその人物は、結局行動に移さない。というか、行動に移すのをだらだらと先送りにする。あのとき話しかけられた人物が立ち止まらなかったら? 話を聴こうとしなかったら? そんな危ういバランスのなか、赤堀さんはいやいや乍らであっても彼の話を聴く人物が登場するものを描く。

そこに希望を見る。そうだった、このひとはどん底からちいさくて仄かな光を描くひとだった。

転換時に山下敦弘監督のロードムービーを上映。かつて好きだった女性を男3人で訪ねていくというストーリー。赤堀さん、水澤紳吾さん、松浦祐也さんのわちゃわちゃドロドロした会話がこれまたヒドくてせつなくて、はあ困ったねえ、生きていくしかないのかねえと思うのだった。

それにしても衣裳(坂東智代)が絶妙。赤堀さんの作品って、どこで見つけてくるんだっていうすんごく冴えない、でも本人は精一杯おしゃれして身だしなみを整えてるってことをギリギリ観客に感じさせるコーディネートの人物が毎回出てくる。今回でいったら「8050問題」の、デリヘルを家に迎える人物の格好ね。

日替わりゲストは大倉孝二さん。久々に大倉くんの凶悪な歳下キャラが観られて楽しかった! この日はカメラが入ってたんだけど、本人たちも放送出来ないかもっていってた(笑)。お金を返してとやってくる人物(ゲスト)と、返せないという人物、という設定以外は即興だったらしい。田中哲司さんゲストの回を観た方の話を聴いたけど全然展開が違ったわ……大倉くんE亭のTシャツ着てお弁当持参で、赤堀さんと一緒にお弁当食べたりしました。どう出るか読めなさすぎて、キャーキャー怖がる赤堀さんが見ものでした。

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09月29日(金)
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