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I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『虹む街の果て』
『虹む街の果て』@KAAT神奈川芸術劇場 中スタジオ

よこはま たそがれ 久々KAAT
みんなと 再会 #虹む街の果て
小さな雨雲 キャワワなロボ犬
それってソイレントグリーン!?
それって人肉!?
いやいやそれはルネ・ポレシュ〜♪ pic.twitter.com/lI4LpfzK2r— kai ☁️ (@flower_lens) May 20, 2023
そういえば『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』には木内みどりさんが出演してらしたわねえ、緑繋がり……なんてどうでもいいことを思い出しつつ観てしまったのだった。

いや、どうでもいいということでもないのだ。『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』はベニサン・ピットで上演されたのだが、『虹む街』および『虹む街の果て』のセットは過去ベニサンで上演された『血の婚礼』を彷彿するセットだった。雨が降り続くコインランドリーというシチュエーションも同じだ。

webに当時の画像が見つからないので、2011年上演版の記事を。世界観は同じ。
・大規模修繕劇団「血の婚礼」フォトコール@にしすがも創造舎体育館特設劇場┃おけぴネット

『血の婚礼』上演記録はこちら。1986・1993・1999・2011年の4演中、1986・1999年の2演がベニサンで上演された。
・血の婚礼┃清水邦夫著作リスト

染色工場をリノベした劇場。ペニノやタニノクロウ演出作品とベニサンは相性いいだろうなあとずっと思っていた。実現しなかったそれを観られたようで嬉しかった思いは、一昨年の『虹む街』から続いていること。

以降連想ゲームのようになっていくが、『皆に伝えよ!ソイレントグリーンは人肉だと』のインスピレーションとなったSF映画『ソイレント・グリーン』が、今作のモチーフのひとつだというのはあながち勘違いでもないかもしれない。未来で廃墟で緑でという視覚情報に引っ張られてるかな、私の思い込みかなあとぼんやり考えてはみたものの、舞台(上演前後に撮影してくださいと開放されていた)の片隅と、配布された撮影時の注意書きにはこんなマークが提示されていたのだ。

えマジで人肉だったり pic.twitter.com/hyH6POO9F7— kai ☁️ (@flower_lens) May 20, 2023

ここ迄くると、『ソイレント・グリーン』が世界観の下敷きになっているのは間違いないように思う。後述の「ごあいさつ」から察するに、『ソイレント・グリーン』をたたき台にトライアンドエラーが繰り返され、結果こうなったのかなあなんて思った。

前置きが長くなった。今作は2021年に上演された『虹む街』のリメイク作品だ。作・演出のタニノクロウを筆頭に、美術稲田美智子、照明大石真一郎、音響佐藤こうじと馴染みのスタッフも続投、“街の人たち”もほぼ続投。大きく変わったのは、物語を展開させる演者を置かず、“その後”の街の風景をスケッチするような作品になっていたことだ。台詞劇としての要素は少なく、共通言語は音楽で表現される。パーカッショニストである渡辺庸介が劇伴と歌の伴奏を担う。

その後といっても10年20年という近未来ではない。もっとずっと先の風景だ。セットは同じだが、それはカビだか植物だかの緑に侵食されている。そこに『ソイレント・グリーン』の世界が紛れ込んでくる。彼らが食べている、グリーンのゼリーは何か? それは何で出来ているのか? ともあれ、彼らは生きていて、異なる民族、異なる人種、そして恐らく異星の生命体と共生している。ロボットやマシーンといった人工物にも生命があるように描かれる。何せロボットのなかや自動販売機の“中”には人間がいるのだ。リアルで“中の人”。

『虹む街』でサロンだったコインランドリーは廃墟になっている。しかしサロンとしての機能は残っている。洗濯機も動く、占いゲーム、ホットスナックの販売機も生きている。中華料理店はその建物だけが残り、いぬを飼いたがっていた女児はいない。「いぬがかいたい、いぬがかいたい」という声が聴こえてくるが、その声の主は素性も行方も不明で、現れたいぬはロボットだ。このロボットの造形がまたなんというか哀れを誘う姿で、かわいいやらせつないやら。


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05月20日(土)
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