ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■小林建樹と高橋徹也、と菊地成孔の話
あれだけ書いてまだあるのか。あるんですね……。
先日バート・バカラックが亡くなったとき「そういえば小林さんがラジオで『Alfie』弾いてたなあ」と聴き返していたのです。
・小林建樹・ムーンシャインキャッチャー”R" 第16回”Alfie””枯葉””星に願いを”(2022/11/16)
この回でキース・ジャレットが演奏する「枯葉」についても言及していたんですね。原曲の半音上のコードを弾いている。こんなのよく思いつくなあ、トリオでのライヴ演奏で、ベースもそれに合わせてる。即興だったんじゃないだろうか、咄嗟のことなのになんで合わせられるの? そんなんある!? といったら「キース・ジャレットのトリオやったらあるやろ」といわれた。「いや、ないやろ」「いや、ある」。「ない」といったのは僕だけ、「ある」といったのはふたり。2対1で言い負かされた感じになったんだけど、という話。コードの名称をいうのではなく実演しているので、専門知識がない人間にはわかりやすく有難い。キース・ジャレット・トリオはキース(pf)、ゲイリー・ピーコック(b)、ジャック・ディジョネット(drs)という編成で、動画も沢山上がっているので聴いてみると面白いです。
そこから思い出したのがこれ。
・大恐慌へのラジオデイズ 第18回「続・スタジオミュージシャン」 ビュロー菊地チャンネル(2021/01/28)
大恐慌へのラジオデイズ 第18回「続・スタジオミュージシャン」(2021/01/28)
有料ですが、多分単品でも買えます(月額なので、一ヶ月だけ入会するとか)。これで菊地さんが高橋徹也の「ナイトクラブ」と「チャイナ・カフェ」をレコーディングしたときの話をしているんですね。かいつまんで書くと、
・高橋さんの音楽はジャンルミュージックにお手本がなく、コード進行とかもめちゃくちゃトゥイステッドしていた
・最初に「ナイトクラブ」のブラスなしデモとコード譜もらって聴いたとき、おっうおわ〜と思った。お゛うおわあ゛〜出てきた出てきたこういうのん、って
・そこで、ギル・エヴァンスの『プレイズ・オブ・ジミ・ヘンドリックス』(The Gil Evans Orchestra Plays the Music of Jimi Hendrix)、『フラミンゴの飛翔』(Where Flamingos Fly)、マンデイナイト・オーケストラの手法でブラスアレンジをした
・「チャイナ・カフェ」のフリージャズアプローチは、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、ブリジット・フォンテーヌの『ラジオのように』
・サックスソロはいろんなアプローチをしたけど納得されなくて、軽く行き詰まったので「あのー。試しにキー変えてやってみましょうか。間違いのサンプリングみたいな感じで、元に戻んないやつ」といってキーを変えて吹いた。「やっぱこれじゃダメっすかねえ調子っぱずれですかねえハッハッハ」っていったらそれが採用になった
で、思い出したのが先日読んだ高橋さんの楽曲アナライズ。
(「ナイトクラブ」サビの)長3度上昇でグルグル転調していく展開、これはJohn Coltrane「Giant Steps」で使われたことで有名なColtrane changes(の難しい方)である。ポップスにおいてついに実用化されたのだ。ジャズに明るい友人が居てその人から教えてもらったのか、当時狂うあまり自力で思いついたのか。
(「チャイナ・カフェ」は)アウトロのサックスソロでキーが半音上昇していた。
引用//・コード進行で見る高橋徹也┃古い土地
(「ナイトクラブ」の)Coltrane changesをどういう経緯で知ったんだろうか? まさか自力で?
引用//・【楽曲解説】高橋徹也 - 『夜に生きるもの』(コード進行で見る高橋徹也A)┃古い土地
菊地さんの証言によると、「ナイトクラブ」の所謂“コルトレーン・チェンジ”なコード進行は高橋さんご自身が書いたものということになる。やはり自力か。「チャイナ・カフェ」のキーが半音上昇しているサックスソロ含め、ジャズのアプローチとして「わかるひとにはピンとくる」アレンジを持ってきたのは菊地さんの貢献によるものですね。しかしその、「半音上げた」ソロが出る迄OKを出さなかったのは高橋さんなのです。おおう。
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02月15日(水)
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