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by kai
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■『高橋徹也 × 小林建樹』2
(続き)

『高橋徹也 × 小林建樹』@Star Pine’s Cafe

アンコールは小林さんの楽曲「満月」をふたりで。「(デビュー時)R&Bシンガーっていわれたことあるんですよ。ブラックミュージック得意なんですか? って訊かれて、いやあ、得意じゃないですぅって」と小林さん。ジャズやラテンミュージックのコード、南米(遡ればアフリカ)のリズムを他の誰とも似ていない手法で使うところもふたりの共通点だ。デビューする際、不特定多数に紹介しやすいようジャンル分けをしたり、レッテルを貼るという手順は必要かもしれないが、このふたりは「他の誰とも似ていない」ためジャンル分けしづらいというところはある。似ていないところが似ているというのは矛盾だが、だからこそ他に代えがたい。

「シンガーソングライターって、バンドみたいに一緒にバンに乗ってツアーに出たりしないし、横の繋がりがなくて孤独ですよね」と高橋さん。「集まると皆シャイですもんね。(それぞれの)世界がいっぱいある感じ」と小林さん。そうだなあ、誰にだって代えはいないのだ。

「自分の歌をクセのある声のひとに唄ってほしかった」「やっと唄ってもらえます、うれしいです」と小林さん、資料(といったのが印象的)をもらって聴いていたとき「タイトルが最初のフレーズにないんだ、と思った。格好いいなって」と高橋さん。「小林さんのファンはすげえ大目に見てやってください」と謙遜した直後、導入の“見上げれば”。息を呑む。つくづくギフトな声。サビはユニゾン。ハモる箇所は高橋さんが上を唄う。グリッドがズレる、揺らぎが生まれる。ラジオで小林さんがいっていた「(高橋さんの楽曲を)唄えてると思うんだけど、実際唄うと微妙にズレる」は、小林さんの楽曲を高橋さんが唄う場合でも同様だ。この微妙に合わない辺り、カッチリ合っていないのにどうしようもなく魅力的な響きが生まれているところはストーンズぽくもあるじゃないか。これはソロでは聴けない。今だけだ。また楽譜が落ちる。高橋さんがハミングし、ふたりでスキャットから輪唱へ。こんなに演奏が終わってほしくないと(以下同)。

高橋さんの「互助会が必要、シンガーソングライター互助会」との言葉に笑いつつ、それは確かにと思ったりもする。同い歳、90年代後半にデビュー、バンドセットでのベースが鹿島達也さんだったりと共通点もあり、共感するところも多いというふたり。何故接点がなかったのか……と疑問ではあった。しかし考えてみれば、あの頃のふたりはそれどころではなかったのだろう。当時の高橋さんのことは知らないが、かなり葛藤の時代があったようだ。高橋徹也の屋号のみで作品をつくり続けてきた。自分の世界を表現出来るのは自分だけだという自負も感じる。だから今回、『1972』に続き小林さんに自分の歌を一部任せたことは大きなエポックに感じる。一方小林さんも悩んでいたし、苦しんでもいた。プロデュース、楽曲提供、サポートミュージシャンの活動を経て、ソロシンガーとしての活動に再び主軸を置き、「楽曲提供とは違う自分の曲」を誰かに唄ってほしいと思っていた。

小林さんは高橋さんと自身の楽曲から共通点のあるセットリストを組んだ。高橋さんは自身の歌詞から、対象として小林さんが浮かび上がるような楽曲を選んだ。小林さんは演奏で親愛の情を示し、高橋さんは詩で時間を辿った。これぞ互助会。交流が始まったのが2013年でよかったのかもしれない。機会をつくってくれた山田稔明さんに感謝するばかり。

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E. Gt.:
SE Overture - Blackbird
01. ブラックバード
02. 八月の流線形
03. サマーパレードの思い出
04. Blue Song
05. 無口なピアノ
06. 夜はやさしく
07. La Fiesta
08. 新しい世界(w/小林建樹)
09. 怪物
en. 満月(w/小林建樹)
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01月28日(土)
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