ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■『高橋徹也 × 小林建樹』1
『高橋徹也 × 小林建樹』@Star Pine’s Cafe
やーなんかエラいもん見ちまった(聴いちまった)という思い。一周まわって見ては(聴いては)いけないものを見て(聴いて)しまった気すらする。いや、よかったのだ。生きててよかったあなたもワタシも。 pic.twitter.com/yHWm2twgxn― kai ☁ (@flower_lens) January 27, 2023
お互い相手の曲/詞を己に取り込んだ上で構成したデッキバトルという印象だった。興味深かったのは、小林さんは高橋さんの楽曲をアナライズし、高橋さんは小林さんの歌詞に着目していたところかな。それを念頭に両者ともセットリストを考えていたように感じた。それがああなるってところが凄すぎてな……恐ろしい恐ろしい。
『1972』以来、6年半ぶりのツーマン。今回おふたりとも、ライヴにあたっての取り組み方やヒントのようなものをweb上で公開していた。小林さんはYouTubeラジオで高橋さんの「ハロウィン・ベイビー」「Feeling Sad」を実際にピアノで演奏し乍ら楽曲解説。字足らず/字余りな言葉の載せ方に初めて佐野元春を聴いたときと同じような衝撃を受けたこと、YMO(坂本龍一)「Behind The Mask」のコード展開との類似性について話す。高橋さんへインタヴューも行い、あーこりゃ相当興味をもって研究しているなというのが窺えた。
一方高橋さんはブログで、「本を読むこと」により「日常生活と多層的に並走するもうひとつの時間軸」を持てることの心地よさを書いていた。
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さて当日、先攻小林さん。強いストロークでギターをカッ、と鳴らし、一気呵成に3曲。チューニング的なピッキングを曲間のブリッジにしてグイグイ進める。つっかえた箇所をやり直したりもするが、そこで停まらず同じテンポで繰り返し、そのまま「そういうフレーズ」にしてしまう。これはいつものことなのだが、恐らく脳内にクリックとグリッドがあり、やり直す際起点をそのグリッドに「置く」ことで演奏を停滞させないようにしている。ひとりでポリリズムを演奏しているようなものだ。どこ迄意識しているか判らないが、夢中で弾いている結果そうなっているようにも見えるので、やはり天性のものだなあと思ってしまう。そこに至る迄には相当練習している(本人曰く「オートマチックに弾けるようになる迄」)訳でもあるが。
そんな凄まじい演奏と歌の間に、ジャカジャカジャカ(ギター)「はいっ、こんばんは〜こばやしたてきで〜す♪」てなノリで話すもんだから聴いてるこちらは脳がバグる。なんだか壮絶なギター漫談を聴かされているみたいでもある。チューニングをしつつスターパインズでの思い出話と、当時のライヴ音源を今日持ってきてるんで〜と告知(?)するものの、それが収録されているアルバムのタイトル(『流れ星トラックス』)をいわないもんだから物販のスタッフさんは質問されるだろうな〜と思う(笑)。
それにしてもハードなセットリスト。「ロックンロール」「ラブ」という強いワードが入った歌詞、挟んでくるコード、ラップとフェイクを詰め込んだパーカッシヴなヴォーカル。高橋さんの作品から見つけた要素を自分の作品で応えるならこうかな、という選曲にも感じる。「告白」が圧巻。これはもともと「殺」「死」といった強烈なワードが入っている歌だが、今改めて聴くとここ数年の社会情勢にピタリと合うような歌詞。リリースされたのは2003年だ。中盤ギターから手を離し、声だけで進める。“だけども”のフレーズを、オクターブを変えて唄う。頭のなかで鳴っている音楽に身体がビュンビュンついていくのだが、それでも間に合わないときがある。そうなると言葉が追いつかないからストレートで強いワードが出てくる、声一本に絞って表現する。剥き身というか生(き)の歌を突きつけられているようで、思わず身震いする。かつて「言葉より先に行きたい」といっていたことを思い出す。そして、ラジオで言及していた「(高橋さんの歌詞の)字足らず/字余り」についても思い出し、そこから選曲したのかな、とも思う。
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01月27日(金)
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