ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■SPC 25th Anniversary 高橋徹也26thリクエストライブ『My Favourite Songs』
SPC 25th Anniversary 高橋徹也26thリクエストライブ『My Favourite Songs』@Star Pine's Cafe

ハコもご本人もおめでとうございます、これからもよろしく pic.twitter.com/5Ddy6WUV8m— kai ☁️ (@flower_lens) September 21, 2022
ブルーノートといえたら、ブルースといえたらいっそ楽なのだがそうではない、あのコード、あの唄い方。ルーツは見えるのにフォロワーにはなっていない。本当に不思議な音楽家。

記念すべきデビュー当日に合わせているので平日なんですが、と気遣いを見せつつ、演奏は俺様でよかった。しかも今回、事前に来場(+配信視聴)予定者からリクエスト曲を募るという面白い企画が用意されていました。平日に吉祥寺迄足を運ぶくらいコアなファンであろうこの日の観客だけあって、レア曲満載。かくいう私はというと、リクエストには参加していません(笑)。いやあ、聴きたい曲で浮かぶのって、普段のライヴでも聴ける曲ですし。レア曲知りませんし。ずっと聴きたかった「惑星」は、4月のDiscography Live『ある種の熱 × 大統領夫人と棺』で聴けたし。それに「この日ってバンドセットじゃなかったよな……弾き語りで出来る曲に限られるかしら?」「インストはいいのか?」なんて考えてしまって、結局リクエストは送らないまま当日に。まあ、投票数が多いと思われる「犬と老人」や「海流の沸点」はやるだろーなんて甘えもありました。

定番ともいえる1、2曲めを終え、「ここからが大変なんですよ」「こんなに自分本位で進められないライヴは初めて」。普段は起承転結を考えて選曲するんだけど……とのこと。本当は曲毎に、つくったときの思い出や発想のもと等話せればいいんだけどそんな余裕はないと(笑)。でも「国際人は電話をしない」をつくったときのエピソードは話してくれて面白かった。1997年、携帯電話が普及し始めの頃ですね。個人的にこの年はフジロックフェスティヴァルの1回目と記憶に刻まれており、友人の携帯が繋がらなかった話を思い出すので「わかる〜」と頷きました(笑)。

ちなみにいちばんリクエストが多かったのは「夜明けのフリーウェイ」とのこと。「いい曲だよねー」と自らいっておりました。興味深かったのはこのMC、話を聞いていると自画自賛とはちょっとニュアンスが違うんですよね。もっと曲を客観的に見ているというか……自分の作品をリスナーとしても聴ける耳があって、尚且ついい曲だと。いやほんと、実際そうだと思います。

知らない曲も、曲名だけは知ってて聴いたことがなかった曲も、お噂はかねがね……という曲も。初期の曲、音源化されていない曲、本人も憶えていない曲(!)。「ここしか憶えてないんです」と歌詞の断片を書いてきた方もいたそうで、「俺も憶えてない」(笑)。それが気になるよ! でも憶えてないから当然演奏されなかったよ! いやー貴重な機会だった、リクエストしてくれた先輩方有難うございます〜。

ライヴで聴けたのが初めてだったのは「音のない音楽」「無口なピアノ」「リンゴひとつ分の魔物」「ヒッチハイカー」「国際人は電話をしない」かな。タイトルだけでも惹かれるものがありますが、詞と歌、演奏が一体となったときの映像喚起力が激烈。ブリティッシュロックとジャズ、アメリカ文学により日本の原風景が眼前に現れるというか……。こんなの他に誰がやれるというのか。曲、詞、演奏、歌唱と分割すればそれぞれのルーツはなんとなく見えるのです。しかしそれらが全部合わさり浮かび上がるのは、高橋徹也としかいいようのない世界。エドワード・ホッパーの『ナイトホークス』は吉祥寺にあったのか、なんてことも夢想しました。

前半エレキ、後半アコギ。スイッチングのノイズもわかるくらい、静かに聴き入る観客。あ、このタイミングであの音になるんだ! と、バンドセットでは気付けなかった細やかなエフェクター操作も堪能。実験の成果を披露する感覚もあり、ギター小僧らしさが見え隠れ。


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09月21日(水)
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