ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
[647769hit]

■『スパークス・ブラザーズ』
『スパークス・ブラザーズ』@シネクイント スクリーン1

「間違っていたけど正しかった」「変でいいだろ?」。浮いては沈み浮いては沈み浮いて沈めばまた浮かぶ。自分たちがこれだと思ったものだけを創り続けて50年、常に今が最高の #スパークス・ブラザーズ ! エドガー・ライト監督素晴らしいドキュメンタリーを有難う〜!!! pic.twitter.com/Vgngk76wRs― kai ☁ (@flower_lens) April 9, 2022
フリーの「ポップミュージックで戸惑うのは、ユーモアに対する受容性の欠如。だからスパークスはビッグになれない。面白すぎるから」って言葉がズバリで膝を打ちまくった……あと誰だったかな、「新しくファンになったひとに、自分が昔から知っていることを自慢したりしない。『過去を知らなくてもこれから彼らの音楽を聴けることが素晴らしいんだよ』っていう」ってなことをいってた方がいて、こちらも正にスパークス! って感じで涙。

-----

「あなたのスパークスはどこから? 私はここから!」。これ程ひとによって出会いが多彩で幅広いユニットもなかなかない。なにせ「ここ」が半世紀にもわたるのだから。グラム、パンク、ニューウェイヴ……ジャンル分けなど出来ない、強いていうなら「スパークス」がジャンル。ちなみに私の第一印象はご多分に漏れずヨーロッパのバンド、そのオペラティックな歌唱スタイルから「クラウス・ノミだ!」だったのだが、ノミのデビューからして1981年だ。映画本編でも証言されているように、「デペッシュ・モードだ!」とか「ペット・ショップ・ボーイズだ!」(クリスの扱いウケた)といった「○○の影響を受けている or ○○のオリジナル」といった印象は全てリスナーの聴いた順番によるものでしかない。こういうところ、大友克洋が切り拓いたスタイルを若い世代が「ありふれた手法」といってしまう現象に通じるものがある。歴史を俯瞰で見るってだいじだな……。ちなみに『Balls』は2000年発表だが、一周回って「プロディジーだ!」なんて思ってしまった(笑)。

1971年にデビュー(前身のハーフネルソン結成は1968年)し、ポピュラーミュージックを奏で続けて50年。ライトが撮影した2年間と、過去の膨大なアーカイヴ映像をどう組み合わせるのか。当時を振り返る兄弟や関係者の証言と過去をどう繋げるのか? ライトはポップカルチャーを総動員してきた。歴代作品のアートワーク、インタヴュー映像といった実写に加え、その周辺情報、残されていない映像や逸話(噂話=伝説)、当人たちの心象風景をタイポグラフィ、パペットアニメとイラストレーションで交通整理する。これが非常に効果的で、インタヴューイが話している内容から、その作品、時代背景が鮮やかに展開/再現されていく。正に全てのデザインは編集である、“映画もまた編集である”。

その編集というのが見事で、非常にリズミカルでスピーディ。観ていて快楽すら感じる程。ライト本人が“Big Fan”としてしれっとインタヴュー映像に登場していたところ、ライトの盟友、ニック・フロストとサイモン・ペッグが声で出演(ジョン・レノンがリンゴ・スターに「おい、マーク・ボランがヒトラーと共演しているぞ!」と電話したシーン)しているところにも洒落っ気が効いてて最高。

それにしても、プライベートのこと迄そんなに深掘りしていなかったので、初めて知る(見る)ことの多いこと。兄弟揃ってアメフトの選手だったとかさ……『アネット』のハイパーボウルスタジアムのシーンはアメリカエンタメの象徴という印象だったが、ふたりの思い入れもあったのかも知れない。そして幼少期の映画体験。さまざまな国からさまざまなジャンルの映画が輸入されるアメリカで、兄弟は多様なカルチャーを吸収していったのだということが理解出来た。


[5]続きを読む

04月09日(土)
[1]過去を読む
[2]未来を読む
[3]目次へ

[4]エンピツに戻る