ID:43818
I'LL BE COMIN' BACK FOR MORE
by kai
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■フランソワ・シェニョー × 麿赤兒『ゴールドシャワー』
フランソワ・シェニョー × 麿赤兒『ゴールドシャワー』@世田谷パブリックシアター

麿赤兒 × フランソワ・シェニョー『ゴールドシャワー』キャッ、ハレンチ❤でもラブでいっぱい❤フェティッシュで、スパンクハッピーで、ユーモアたっぷり、憂愁てんこもり。衣裳もかわいい! ふたりの張り合いファッションショー、ふたりの命懸けの子守唄。 pic.twitter.com/nWOunSfX0w— kai ☁ (@flower_lens) October 17, 2021
いんやしかしさ、ときどき麿さんの年齢忘れるけどおじいちゃんじゃん…それをあんなにぶん回して……笑って観てたけど途中からだ、大丈夫!? と我に返ったりしたよね……。

「ぶん回して」というのは、シェニョーが麿さんを抱えてぐるぐる回るシーンがあったのです。その回数といいスピードといい、遊園地のアトラクション並みじゃねえのという激しさで。脱臼したらどうすんの、と不安になった程でした。ていうか麿さん一時期より(まあご病気もあったし)若返った感じがする。というのも、シェニョーと張り合ってファッションショーしてるシーンで、むっちゃ脚あげるところがあったんだけど、その脚の伸びが素晴らしかったんですよ。一瞬とはいえ『殺し屋1』のかかと落としばりにまっすぐだったわよ。ちなみそのとき下駄履きだったんだけど、ぐらつくこともなかった。ゆっくり膝を折る場面でも、身体は揺らぎもしなかった。

……いきなり話題が逸れていますが、フワンソワ・シェニョーと麿さんの作品『ゴールドシャワー』です。2013年にシェニョーと出会い、「貴公子然とした美貌の中に傲慢、儚さ、頽廃、高貴、破壊欲求が渾然と渦巻き、漸く立っているという姿に胸がキュン、一目惚れだ」(日本経済新聞 麿赤兒『老人と青年』より)とメロメロになった麿さん。年齢差40歳のふたりが意気投合、7年かけて創作し、昨年パリで初演した今作がようやく日本にやってきた。シェニョーは昨年もコロナ禍のなか早くから来日公演を敢行していたし、麿さんもガラガラの飛行機に乗りパリへ飛んでいた。さて、いったいどんな作品? 麿さん自身が認めるように『ベニスに死す』みたいな関係性を描いたものかしらと思っていたが、見えてきたのはお互いを屈服させようという支配欲ではなく、イチャイチャした張り合い(微笑)と共犯関係。ともに生き、タイトルよろしく連れションもしちゃうふたりを分かつものは死しかないのだ! いや、死者の世界でもバーレスクショウは続くのだ!

ふたりのをどりはエロティックなスリルに満ちていた。無音のパートも多いなか、聴こえてくるのはふたりの息遣い。ときには穏やかな、ときには荒れた、艶めかしく苦しげな喘ぎは、観る者の心拍をあげてくる。

麿さんのソロから開幕。くわえが両面についている、女の神楽面を手にする麿さん。舌になっているおもて面のくわえを噛み、まぐわいのをどりが始まる。まあ生々しい、こうして大森立嗣と大森南朋が生まれたのね〜などと邪念がつきまとうが(…)それもまた一興。やがて聴こえてくるは水の音、麿さんの股ぐらからシェニョーの登場です。初対面はつやつやの、光り輝くおしりから。逆子かい! 生まれた瞬間から死の危機ですよ。

しかしこの児はすくすく育つ、コルセットが必要なお年頃に。シェニョーのコルセットを締め上げ、その紐を手綱よろしくしならせて、シェニョーの尻をスパンキングする麿さん。喘ぐシェニョー。しばし手綱ひきの戯れ、電車ごっこへ。思わず生唾ゴクリ、あー隣のひとに聴こえちゃったよな(苦笑)下手するとホール全体に響いちゃったんじゃないかな、というくらいの静寂。皆見入っている。角度によって男性器にも女性器にも見えるオブジェの割れ目から顔を出し、突起に手を伸ばして引き倒し、嘆きの声を発する。


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10月17日(日)
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